恩返しをマウンドで表現した。東北工大が4-0で東北大を下し、1勝1敗の五分とした。先発の伊藤理壱投手(4年=仙台城南)が6回2安打無失点の好投で、勝利を引き寄せた。

磨いた直球で勝負した。伊藤は初回から安打と連続四球で1死満塁を招くも「切り替えていこう」と、外野フライ2つで切り抜けた。5回は失策が重なり、1死一、三塁。マウンドに駆け寄った荻原満コーチからの助言を胸に「絶対ゼロに抑えると、ギアを上げました」。持ち味の力強い直球を生かし、三ゴロ、左邪飛に打ち取った。6回を無失点に抑え「こうして結果を出せて良かったです」と安堵(あんど)しながら目を潤ませた。

涙には理由があった。今春は4勝6敗で4位、伊藤個人としては5試合に先発し計23回15失点。昨秋から主将を務めていた。「言い訳になってしまうんですが、自分の練習よりもチームのことをみると、そこの部分で結果も思うように出なくって」。目黒裕二監督に直談判し、今春リーグ戦後に主将を千葉周永内野手(3年=一関学院)に引き継いだ。苦渋の決断だった。

投手に専念する以上、責任は増す。「今まで足を引っ張ってきた分、恩返しがしたいという気持ちが大きかったです」と明かした。月に1度、東京の施設に足を運び、動作解析を元に投球を見つめ直した。ウエートトレーニングは体を絞ることに特化。フォーム改善にも励み、ボールの回転数は春の1800から2300まで増え、球威もアップ。後輩にも積極的にアドバイスを求め、最後まで学びの姿勢を忘れずに今秋を迎えた。

並々ならぬ思いで戦い抜く。「背負うものが大きいのに主将を引き受けてくれた千葉や、主将を降りることを受け入れてくれた監督にも感謝をしています。4勝を目標に、悔いのない投球をしていきたいです」と誓った。恩返しのマウンドに立ち続ける。【高橋香奈】

◆伊藤理壱(いとう・りいち)2003年(平15年)9月11日生まれ、宮城県出身。仙台一中、仙台城南でプレー。東北工大では1年春から公式戦出場。176センチ、77キロ。右投げ右打ち。