慶大の期待のルーキーが、待望のリーグ初安打となる1発で試合を決定づけた。途中出場の一宮知樹外野手(1年=八千代松陰)が2点リードの6回2死二塁で左越え2ラン。内角に来た直球を狙い澄ましたかのように左翼席に運んだ。

一宮 第1戦にチャンスで回ってきたところで、三振という結果で終わってしまって。その悔しさを持ちながらでしたが、自分のスイングができた。感触はよかったんですけど、入らなかったら大変なことになるんで。全力で走っていました。

昨秋の巨人ドラフト1位の石塚裕惺内野手(19=花咲徳栄)とは佐倉シニア時代のチームメートだったが、高校からは別々の道をたどった。一宮は同シニア先輩の吉野太陽内野手と吉開鉄朗捕手(ともに3年)と同じく慶応を目指したが、難関私立の壁は高かった。併願先の千葉・八千代松陰に進むが、これが大きな転機になった。充実の3年間がグラウンド内外で心身共に自らを鍛え上げた。

一宮 (八千代松陰では)野球に関しては、いつも試合になると自分のことになってしまって。(中学までは)結果が出ないと試合中で落ち込んだり、声出さなくなったりしたこともあったんですけど。兼屋監督にそこを厳しく指導されて、チームのことを第一に考えることは大切な学びになりました。

3年間野球に打ち込みながらも、勉強も怠らず特進コースに在籍した。各学年700人超がいる生徒数を誇る「マンモス校」において文武両道を極め、科目によっては10番以内に入るほど秀才ぶりを発揮した。高2の冬ごろから予備校に通い始め、志望校の慶大へ一直線。得意教科の日本史を軸に安定した得点を積み上げ、努力が実り見事にストレートで慶大経済学部の合格を勝ち取った。

受験勉強でしばらく野球とは離れていたが、連夜の個人練習でバットを振り込みブランクを埋めた。春季フレッシュトーナメントでも要所で結果を残して4季連続優勝に貢献すると、迎えた秋季リーグではメンバー入り。堀井哲也監督(63)は「非常に守備力が安定しているのと、攻守にアグレッシブなところがあるので、チームに勢いを付けてくれるんじゃないかと期待を持って送り出した」と信頼を寄せる存在に成長した。

高校時代に慶応に進んでいたら、見えなかった景色もある。

母校の八千代松陰は今夏の千葉大会で決勝に進みながら、市船橋に延長10回タイブレークの末に惜敗した。27年ぶりの甲子園切符はつかめなかったが、青々としたユニホームを着たナインが見せた「松陰旋風」にOB、OGも色めき立った。もちろん、一宮もその1人だ。後輩たちの勇姿は慶大でプレーする上でも、大きな刺激を与えている。「野球のやり方次第で、実力以上の結果が出る」。どんな強敵にも理詰めに戦略を立てて、ひるまず向かっていく。期待のルーキーが秋の神宮を沸かすのはまだまだ続きそうだ。【平山連】