阪神の新主将・坂本誠志郎捕手(32)の覚悟と自信が見えた。侍ジャパンの一員として初めてWBCを経験。16日帰国してから「阪神モード」に180度切り替えた。急ピッチで開幕に仕上げているが、準備不足の不安は完全否定。開幕直前、新リーダーが揺るぎない自信を語った。【柏原誠】
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愚問か、とも思った。WBCの期間中、阪神のことはどれくらい頭にあったのかと。侍ジャパンは国民の期待を背負って、世界一目指して一世一代の勝負をしている。しかし、今年から主将も務める責任感の強い坂本のことだから…。質問すると、少し笑みを浮かべながら「ゼロですね」。ほぼ即答だった。
「タイガースはゼロでした。最初からゼロと決めていました。中途半端なことはしたくないというのがありました。それはもう、11月の段階でちょっとそれを感じていたんですよね」
昨年11月に行われた韓国との強化試合に招集された。WBC本番も見据え、普段は接することがない他球団の投手とコミュニケーションをとった。相手の韓国の情報もインプットした。まだWBC代表は決まっていなかったが、年明けの本番を想像したとき、「中途半端なことはできない」と自然に結論が出た。
徹底していた。沖縄・宜野座キャンプを離れたのは2月13日の昼。その瞬間、スイッチを切り替えた。代表の活動と関係ない情報はシャットアウトした。簡単なことではないはずだ。
「絶対、目に入ってきますよね。ネットとか見ていたら。でも、本当にそれくらいです。自分から見に行くことはなかったです。あの期間は100%、侍ジャパンに振り切っていました。あれだけの情報量を頭に入れて、かみ砕いて『どうしようか、こうしようか』って考えている時に、阪神のことまで考えていたら…それは無理ですね」
坂本は「阪神をおろそかにしたわけではないですよ」と強調したが、もちろん疑う余地はない。言葉からは日本代表チームで捕手を務める負担のほどが伝わってくる。ヤクルト中村、オリックス若月と役割分担する部分もあっただろうが、自分以外とも深く関わる必要がある特殊なポジションだと再認識させられる。3月16日、成田空港着で帰国。同日中に阪神の遠征先・千葉の宿舎に入った。17日からすぐ、試合に出た。阪神モードに切り替え、猛スピードで1カ月余りのブランクを埋めてきた。
「終わって、帰ってきてから(映像を)見ています。補えるだけの、いろいろな情報を得たり、見たり感じたりしないといけない。そこは言い訳にはしないし、するつもりもない。10日間でたくさん会話をしたり『そう思っているんだ』というのをできたらいいと思っていました」。
開幕投手の村上とは帰国後、1度だけバッテリーで試合をした。村上は「気になったところも話せた」と詰めた会話を交わしたことを明かした。投手陣とは辛苦をともにし、2度の優勝も勝ち取った。長年、重ねてきた時間が自信の裏付けとなっている。
「今までタイガースとして一緒にやってきましたから。この10日間で、いろいろな選手の思いや考えていることを感じたり、把握し切るだけの、中身のある時間を、これまでも過ごしてきたつもりです。そこへの不安は全然ないです」。
セ・リーグ連覇をかけた143試合の長い旅路。虎の司令塔のチャレンジが幕を開ける。



