来年4月開幕予定の「関西独立リーグ」のドラフト会議が16日、大阪市内で行われ、神奈川・川崎北高2年の吉田えり投手(16)が神戸9クルーズから7順目指名を受けた。入団する意向で、男子と同じチームでプレーする初の女性プロ野球選手が誕生することになった。漫画「野球狂の詩」で女性の水原勇気投手が、プロ野球を舞台に左下手投げから魔球「ドリームボール」で活躍したが、吉田も右下手投げからのナックルボールでプロの世界に挑む。

 両ほおにえくぼをつくった少女の夢がかなった。神戸から7位で指名された吉田は「えと…頭真っ白です。自分から友達に『指名されちゃった』ってメール送りました」とニッコリ笑った。

 大好きな兄(19)のまねをして小学2年から男子と一緒に野球を始めた。中学では軟式野球部に所属し、男子にまじって正一塁手。川崎北高進学後は、クラブチームで硬球を握ってきた。投手に転向したのは中学3年の夏。父の勇さん(45=自営業)が「男子に勝つためには投手しかない」と勧め、米大リーグ・レッドソックスのウェークフィールド投手のナックルボールをビデオで見せた。吉田は「こりゃあそんな体力いらないんじゃないか」と、自宅地下にトスバッティング用に設けられた網に向かい、毎日60球の投げ込みを行い、大きく揺れ落ちるナックルを独力で習得した。

 今月4日の関西独立リーグの合同トライアウトの最終選考では、紅白戦で男子相手に1回無失点に抑え三振も奪った。指名した神戸の中田良弘監督(49)は「下手からナックルとは頭使って生きる道見つけたなあ」と感心し、あくまでも実力重視での指名を強調した。今後は下半身を鍛え、体力強化に励ませつつ、短いイニングでの実戦登板もさせながら、将来は先発投手へと育てる方針だ。

 入団にあたっては関西の高校への転校、住居、食事などの整備が必要になるが父勇さんは「安心できるようになれば送りだしてあげたい」と言う。高校1年から進学先に「プロ野球選手」と書いてきた女子高生が、日本初の女性プロ選手として野球の歴史を塗り替える。【村上久美子】