新型コロナウイルスの感染拡大により、2月27日から休止していたボクシング興行が、4カ月半ぶりに再開する。今月12日の名古屋での中日本新人王予選を皮切りに、16日には東京・後楽園ホールで日本、東洋王座のタイトルマッチ2試合が行われる。同興行でメインイベントを務めるのが、東洋太平洋フェザー級王者の清水聡(34=大橋)。ロンドンオリンピック(五輪)から8年。プロ転向から4年。34歳となった銅メダリストにとって、今後のキャリアを左右する重要な一戦となる。

19年7月にWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王者ノイナイ(フィリピン)に挑戦も、6回TKO負け。プロ初黒星とともに、両眼窩(がんか)底、両眼窩内など計4カ所を骨折し、試合4日後に横浜市内の病院で緊急手術を受けた。描いていた世界王者への道が大きく揺らぐ敗北。そして、コロナ禍が続いた。だが、1年のブランクは、清水にとってマイナスだけではなかった。

デビューから8連勝。4戦目での東洋王座奪取と、アマの実績通りの活躍を見せてきたが、ここまでの4年間は、「思うようにいかない」という感覚のずれとの戦いだった。原因は、体の軸のずれ。あらためて自身のボクシングと向き合うと、アマ時代の「もらわずに、自分だけが当たる」という繊細な感覚を失っていることに行き着いた。「ある意味、コロナが良い期間になった」。

外食が多かった食生活は、鶏のササミを中心とした自炊に切り替えた。下半身強化に時間を割き、今春は1カ月で250~300キロを走り、土台を作り直した。「去年の敗戦はもう終わったこと。この復帰戦にすべてをかけている。1年前とは手応えも全然違う」。

五輪がなくなった「20年夏」。競輪界で戦う親友の新田祐大(34)が、東京五輪日本代表に選ばれたことも大きな刺激となった。8年前、ともにメダルを獲得した村田諒太(帝拳)は世界の頂点に駆け上がり、メダルを争った海外のライバルたちもプロで結果を出している。負けていられない。プライドもある。

「ルーク・キャンベルとも(アイザック)ドグボエともやっている。『清水はあまり強くない』と思われていると思うが、ここでバチっと変えたい。今、数年ぶりに、ボクシングが楽しい。『清水、世界行ける』っていう試合をしたい」。

対戦相手は同級14位の殿本恭平(25=勝輝)。大橋会長は「今回はスパーリングを重ねる度に良くなっていった。重圧のかかる試合だが、そこは五輪メダリスト。次が見えてくるような試合をしてほしい」と話す。つまずきは許されない。コロナ禍後、国内最初のタイトルマッチで、清水が存在感を示す。【奥山将志】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)