手厳しい言葉、ブーイング。これらは、時に人の心に傷を与える。ただ、時に何かのきっかけともなり得る。7月30日に行われた、超RIZIN(ライジン)2(さいたまスーパーアリーナ)。神龍誠(23=神龍ワールドジム)は、Bellator(ベラトール)の初代フライ級王座をかけ、RIZIN、ベラトールの元2冠王者の堀口恭司(32=アメリカン・トップチーム)に臨んだ。ただ試合は1回に堀口の左パンチが神龍の右目に入り、25秒でノーコンテストとなった。角膜が傷ついていた。試合後、涙目を浮かべ、報道陣のインタビューに答えた神龍の言葉が印象的だった。
神龍 目が見えてなくて、続行しても、って思って、(レフェリーに)正直に目が見えませんって言ったんですけど、止まる瞬間に観客からのブーイングが来て、あ、俺やらなくちゃいけなかったよなって思って、ちょっと…はい…。プロとして、ここは穴開けちゃいけなかったです。
米メジャー団体ベラトールのベルト。その高みに、日本人の2人が挑戦した。今大会は、RIZINとベラトールの合同興行。「スーパー」なイベントの全13試合の中で、この試合を一番の楽しみにしていたファンも多くいたことだろう。埼玉近郊だけではなく、遠方から訪れた人も多くいたことだろう。だからこそ、神龍の「あ、俺やらなくちゃいけなかった」という言葉が響いた。「本当にみんなをガッカリさせてしまったので、今すぐ目を治してやりたい」。自身のためではなく、ファンのために-。鬼気迫る表情だった。
対戦相手の堀口は、逆の立場だったら? の問いに「自分はやりますね。自分はあほなので」と笑ったが、プロとしての立ち振る舞いを説いた。「そうだな~。本当に見えないのであれば、やるべきではない。プロなので、成績が残るので、見えないのであれば、今回ので良かったと思う」。プロである以上、支えてくれる周囲の人、応援してくれるファンの期待に応えたいと思う。同時にプロである以上、勝利を求め続けなければいけない。
1回25秒。神龍はファンのブーイングでわれに返った。「あれ続けなくちゃプロじゃないと思いました」と言ったが、仮に失明してしまっては遅い。まさに命をかけて、リングに立っていると改めて考えさせられた。神龍は最後、「すみませんでした」と言い、インタビュールームを後にした。プロの格闘家が背負う、果てしないものがそこにあるように感じた。【栗田尚樹】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)


