2017年秋場所で現役引退した大相撲の元幕下大司(ひろつかさ、30)は、「ごっちゃんこ」の名で路上パフォーマーとして活動している。11月中旬に東京都内の繁華街に訪れ、まわし姿でお客さんと路上相撲をしたり、自作のフリースタイルラップを披露したりした。投げ銭のかごがわずか30分でいっぱいになる盛況ぶりだった。「お客さんのノリに後押しされて、良いパフォーマンスができた」とうれしそうに言った。

活動の原点は、腰椎椎間板ヘルニアで満足に稽古が積めなかった同志社大の相撲部時代。気を紛らわせようと友人と一緒に音楽バンドを始め、まわし姿でドラムをたたいて歌う「まわしパーカッション」を担当した。ライブハウスに集まった客から受ける声援が気持ち良くなり、次第にソロ活動へ。より手軽にできるフリースタイルラップに目覚め、路上ライブをするようになった。

大学卒業後の15年春に入間川部屋に入門。そこからは活動と離れていたが、引退後は「土俵に立つときと同じくらいの高揚感を味わえるから」と再び路上に戻った。

第2の人生を歩む今、同学年の活躍は大きな励みだ。関脇の御嶽海、小結の翔猿、平幕の北勝富士や宇良など有望株が多い平成4年生まれ。「現役の時は負けないぞと思って気合を入れてもらった」と稽古していたが、引退した今は「けがや痛みと闘って土俵に上がる姿に勇気づけられる。彼らは彼らの道で納得いくまで相撲を取り、俺は俺の人生を楽しむぞ、と刺激を受けてます」と笑った。

ごっちゃんこさんは、今日もどこかの街に出て、路上ライブに精を出す。風変わりな活動に見えるが、「今はこれが一番自分らしさを表現できるんです」。自信満々に訴えかける言葉が印象に残った。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

◆ごっちゃんこ 本名・太田航大。1992(平4)年8月30日、愛知・岡崎市生まれ。6歳から相撲を始め、同志社大卒業後に入間川部屋に入門。大司(ひろつかさ)のしこ名で15年春場所で初土俵を踏み、17年秋場所で引退。最高位は東幕下49枚目(16年秋場所)。引退後は路上パフォーマーとしてまわし一丁でライブや相撲を行っている。自作したラップの代表曲には「ヘルニア」や「路上」がある。

相撲教習所時代の一枚。後列は左から御嶽海、北勝富士、翔猿で、前列は左から大元、宇良、大司(ごっちゃんこさん提供)
相撲教習所時代の一枚。後列は左から御嶽海、北勝富士、翔猿で、前列は左から大元、宇良、大司(ごっちゃんこさん提供)
ドラムボーカルをする元幕下大司のごっちゃんこさん(ごっちゃんこさん提供)
ドラムボーカルをする元幕下大司のごっちゃんこさん(ごっちゃんこさん提供)
相撲教習所時代の一枚。左から翔猿、御嶽海、宇良、北勝富士、大司、大元(ごっちゃんこさん提供)
相撲教習所時代の一枚。左から翔猿、御嶽海、宇良、北勝富士、大司、大元(ごっちゃんこさん提供)
17年秋場所で引退した元幕下の大司。現在は「ごっちゃんこ」の名で路上パフォーマーとして活動している(ごっちゃんこさん提供)
17年秋場所で引退した元幕下の大司。現在は「ごっちゃんこ」の名で路上パフォーマーとして活動している(ごっちゃんこさん提供)
都内の繁華街で路上パフォーマンスを見せる元幕下大司のごっちゃんこさん(撮影・平山連)
都内の繁華街で路上パフォーマンスを見せる元幕下大司のごっちゃんこさん(撮影・平山連)