ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)が1階級上のバンタム級を見据えたファイトを7度目の防衛戦で披露する。30日のダブル世界戦(横浜文化体育館)を控え、27日に都内で予備検診に臨んだ。挑戦者の同級6位ヨアン・ボワイヨ(29=フランス)とは身長で6センチ、リーチで7センチもの体格差があるものの、来年中に転級予定となるバンタム級の予行演習と位置づけた。またWBC世界ライトフライ級王者拳四朗(BMB)も受診した。

 初対面の印象は想定内だった。身長170・7センチの挑戦者と並び立った同164・7センチの井上は自信に満ちた表情を浮かべた。身長は6センチ差。リーチも7センチ差と判明すると、自然と新たな主戦場となりそうな1階級上のバンタム級を意識した発言を口にした。

 「過去の対戦相手で一番(身長が)高いので気にしていたけれど、そんな(差がある)感じでもなかった。バンタム級に上げていくとやっぱり170センチを超える選手がゴロゴロいるので、いいバンタム級の予行演習になります」

 既にスーパーフライ級では、拳を交えようとする挑戦者も、他団体の王者もいない状況にある。V7戦限りで同級を“卒業”する可能性が高く、来年は3階級制覇を目指してバンタム級に上げる意向を持つ。日本歴代2位の12度の防衛を誇る前WBC世界バンタム級王者山中慎介(帝拳)も身長170センチ。今回の挑戦者はバンタム級を想定したファイトにはうってつけの対戦相手だろう。父の真吾トレーナーは「(予行演習には)ちょうどいい経験になります」と分析した。

 高い評価を受けた9月の米デビュー戦の反響も大きく、前売りチケットも残り数枚を残すのみ。当日券の販売も予定されるが、大橋会長は「すごい売れ行きなんです」と明かす。スーパーフライ級の集大成となるボワイヨ戦。井上は「リングに上がって相手との距離感をみて、対策を考えます」とバンタム級の予行演習を楽しみに待ち構えていた。【藤中栄二】