ボクシングWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)がメダリストタッグで世界的スターとの2団体王座統一戦を制する。9日に埼玉で行われるIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)とのビッグマッチに向け、5日に都内の所属ジムで調整。「盟友」のロンドン五輪バンタム級銅メダルの清水聡(36=大橋)が村田の作戦に「奇策あり」と予想した。

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村田の「盟友」清水は確信めいた口調で、こう断言した。「村田はとにかくボクシングIQが良い。きっと奇策を考えていると思っている」。ゴロフキン対策として、村田が「1回から勝負にいく」と発言したと伝え聞くと「1回が重要とか、前半から勝負をかけるという作戦は普通なら言わない。ゴロフキンも試合時に40歳。後半に勝負をかけようと考えているのかもしれない」と予想した。

04年12月にボクシング日本代表候補合宿で出会って以来、村田とは17年近くの親交がある。頻繁に行われる2週間程度の日本代表候補合宿の食住は、ほぼ一緒だった。12年ロンドン五輪はともにメダルを獲得した。アマチュア時代、国際大会で対戦相手の分析は選手自身が取り組むケースが多く、清水は何度も村田に助言を受けていたと明かす。

「海外のボクサーの分析も早かった。どうしても選手自身で分析しなくてはならず、そこで村田が『こういう動きがあるから』とアドバイスをくれた。ボクはそれを聞いて戦っていた。本当にアドバイザー的な存在でした」。瞬時に対戦相手の分析や対策を整理できる能力はゴロフキン戦でも必ず生きると強調した。

世界トップ級の技術を持つゴロフキンに村田の左ジャブが効果的であると分析する。「あの左ジャブはすごく早い。結構、当たると思う。アマで培った、あのジャブが当たれば攻守一体で動くゴロフキンも流れるような動きができなくなると思っている」と攻略の糸口をイメージした。

16年のプロ転向後、清水は17年に東洋太平洋フェザー級王座を獲得し、21年にWBOアジア・パシフィック同級王座も奪取。年内の世界挑戦のチャンスを待っている状況にある。「自分も年内に世界戦が実現するように進めていただいている。村田の試合をみて、自分の良い刺激にしたいと思っている」という清水は、最後に言った。「アマチュア時代から一緒に戦って、村田は本当に頼りになる存在だった。それはプロになっても同じ。みんなの頼りになるような、村田らしい試合をみせてほしい」。【取材・構成=藤中栄二】

◆清水聡(しみず・さとし)1986年(昭61)3月13日、岡山・総社市生まれ。関西高卒業後、駒大を経て09年に自衛隊へ。12年ロンドン五輪でバンタム級銅メダルをつかみ、五輪ボクシングで日本勢44年ぶりのメダルを獲得。16年にプロ転向。17年に日本最速タイのプロ4戦目で東洋太平洋王座(フェザー級)を獲得し6度防衛中。21年にWBOアジア・パシフィック同級王座も獲得。身長179センチの左ボクサーファイター。