K-1の3階級制覇王者で現スーパーフェザー級王者・武尊(30)が19日、東京ドームで開催される立ち技格闘技イベント「ザ・マッチ2022」で、RISE世界フェザー級王者・那須川天心(23)との最強マッチに臨む。ここまで41戦40勝1敗(24KO)と、圧倒的な実績の持ち主。所属する「K-1ジム相模大野KREST」の渡辺雅和代表(38)は、その強さは心にあるとした。

死ぬか大成功するかのどちらか-。2010年の春だった。18歳でジムに入門してきた武尊を見て、渡辺代表はそう思った。「怖いもの知らずで(練習では)よく倒されていました。だけど、やられてもやられても向かっていく。当時から技術はありましたが、一番強かったのは心です」。

武尊はテレビで見たK-1に憧れ小2で空手を開始。高校でキックに転向し、さまざまなアマチュア大会で経験を積んだ。ジムでは最も小柄だったが、スパーリングでは一回り以上大きな相手にも向かっていった。体を壊して選手生命を棒に振るのではないか、そうでなければ大成功する。同代表は無限の可能性を感じた。

直感は正しかった。11年にプロデビューを果たすと、15年にスーパー・バンタム級、16年にフェザー級、18年にスーパー・フェザー級王座の決定トーナメントを制し、史上初の3階級制覇を達成。ここまで41戦40勝1敗(24KO)の圧倒的な成績を残してきた。

那須川が天才なら、武尊は最強という。「那須川選手はセンスの塊ですし、うまい選手だと思います。だけど武尊は強い」と渡辺代表。アグレッシブに攻め続けるスタイルで「ナチュラル・ボーン・クラッシャー」の異名を持つ。生まれ持った心の強さで「戦闘民族。戦うために生まれてきた男」と表現する。

それを象徴するのが、17年4月のビクトー・サラビア戦。急所への反則攻撃を受け、試合は中断した。嘔吐(おうと)やけいれんを起こす中、武尊は「これが殺し合いなら負けている。試合中断はお客さんには無駄な時間」と意地で立ち上がり、逆に左フックでKOを奪っている。

テクニックでも負けていない。渡辺代表は「武尊の試合は打ち合いに持っていくので、雑なイメージがあるかもしれないけど(相手の攻撃を)もらってないんです」。勝利のために作戦を立て、得意技を封じるよう立ち回る選手が多い中、「(武尊は)相手のいいところも全部引き出して戦う」。心技体、全てで上回る。完膚なきまでたたきのめす。それが最大の魅力だ。

当日のグローブは普段の8オンスよりも小さい6オンス。拳の衝撃はよりダイレクトになり、KO決着の可能性は高い。さらに58キロ契約体重で試合日は62キロまでと通常より戻しの幅も小さい。過去にはない試みだが「倒せばいいんですよね?」と武尊はいたってシンプルだという。渡辺代表は「武尊は大丈夫。絶対に勝ちます。じゃんけんは負けるかもしれないけど、男と男の勝負で負けるはずがない」。同じ階級に強いやつがいるのが許せない。武尊のその思いとともに歩んできた12年間。最強は1人で十分だ。【勝部晃多】

◆武尊(たける)1991年(平3)7月29日、鳥取県生まれ。小2で空手を始める。11年9月にプロデビューを果たすと、15年4月に初代K-1スーパー・バンタム級王座決定トーナメント、16年11月に初代K-1フェザー級王座決定トーナメント、18年3月に第4代K-1スーパー・フェザー級王座決定トーナメントで優勝し、史上初の3階級制覇を達成。プロ通算成績は41戦40勝1敗(24KO)。鳥取県米子市首都圏観光大使、とっとりふるさと大使。20年3月に始めたユーチューブの登録者数は23.3万人。168センチ。

◆渡辺雅和(わたなべ・まさかず)1983年(昭58)9月25日、山口県岩国市生まれ。高校まではバスケ一筋。18歳の時にテレビで見たK-1に影響を受け、上京してキックボクシングを始める。03年にプロデビュー。12年に現役を引退し、バーの店長として働きながらトレーナーとして活動。16年にK-1 GYM SAGAMI-ONO KRESTを開いて独立した。

【ライブ速報】那須川天心-武尊が運命の一戦!勝つのははたして…/THE MATCH速報します