前WBC同級王者でIBF同級8位矢吹正道(30=緑)が、同7位ロナルド・チャコン(31=ベネズエラ)に両拳を痛めながら11回TKO勝ちした。

今後は不透明だが、王者シベナティ・ノンティンガ(24=南アフリカ)への挑戦権を獲得した形で、世界王者返り咲きに向けて前進した。

矢吹は7回2分30秒過ぎに右の打ち下ろしでダウンを奪う。さらに残り10秒でも連打で2度目のダウンを奪った。8回も開始直後からラッシュをかけて3度目のダウン。最後は11回、一気のラッシュを仕掛けて2分35秒TKO勝ちした。

8回に3度目のダウンを奪い、一気に仕留めるモードに突入したかに思えたがペースダウン。「疲れたんで休もうかなと思った」と話す。両拳を痛めたハプニングもあり、衰えない相手のパンチ力への警戒から慎重な試合運びにシフトした。

「思ったよりタフでパンチも落ちなかった。カウンターパンチャーは分かっていたし、狙っていたので無理にいって倒されたら何もならない。安全にいこうと思った」。12ラウンドを戦う覚悟も決めたが「チャンスやったんで」と最後にスイッチを入れてきっちり仕留めた。「いい形で終われてよかった」と言った。

相手陣営にいら立っていたという。「計量の時から向こうのトレーナーがうっとうしかった。何回も量れと言ってくるし、バンテージにもいちゃもんつけられて面倒くさかった。ハプニング続きで、倒したろうと思ってましたけど」。怒りもKOにつなげた。

今後はIBF王座への挑戦を最優先に進めるが、他にチャンスが生まれれば変更する可能性もある。ただ、過去2回戦ったWBAスーパー、WBC王者寺地拳四朗(BMB)との“決着戦”に関しては「拳四朗は敵なんで。敵に合わせる必要はないというのが自分の考え。そういう時(必然性)がきたら考えます。自分は自分の道を歩む」と言い切る。その道はこの日、間違いなく広がった。【実藤健一】