大横綱のDNAを受け継ぐ若武者が、不祥事続きの角界に明るい光をともす。大相撲初場所(14日初日、両国国技館)の新弟子検査が10日、両国国技館で行われ昭和の大横綱・大鵬の孫にあたる、埼玉栄高3年の納谷幸之介(17=大嶽)が受検。188センチ、166キロで他の受検者8人とともに体格検査をパスした。内臓検査の結果を待ち初日に合格が発表され、前相撲でいよいよデビューを果たす。

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 気負わず惑わず悠然と。報道陣であふれる検査場に納谷は、そんな風情を漂わせながら足を踏み入れた。胸をグッと反らせた関取クラスの体は、全受検者で身長、体重とも最高値をマーク。71年夏場所限りで引退した時、大鵬は187センチ、153キロ。時代が違うとはいえ、入門時で偉大な祖父を上回った。握力は右61キロ、左65キロを計測し背筋力も180キロ。数値でも、素材として一級品の期待を抱かせた。

 折しも不祥事が続くタイミングでの角界入り。その問いには「しっかり自分自身のことをやるだけです」と毅然(きぜん)とした表情で答えた。昨年末に受けた同じ質問にも「自分には関係ありません」と即答。堂々とした体同様、精神面でもブレがない。

 「やっと力士になれたという感じでうれしいです」と検査の感想を話したが、既にプロの世界に飛び込んでいる。昨年12月26日に入門し、年始は4日から稽古を再開。幕下、三段目と相撲を取り「多い時は30~40番は取った」という。史上2位の優勝32回を誇る「大鵬の孫」の代名詞は今後もつきまとうが「ありがたいこと。注目されるに見合った力を、ちょっとずつでもつけたい」と迷わず突き進む。心に留めておく「挑戦」の2文字。正月の書き初めでしたためた。

 理想の相撲は「高校の先輩の豪栄道関のような前に出る相撲」。さらに「力強いどっしりした感じ」と話す祖父の相撲もビデオで目に焼き付けている。「しっかり力をつけて幕内で活躍する力士になりたい」。大風呂敷は広げずとも、いやが応でも期待は高まる。【渡辺佳彦】