西前頭3枚目栃ノ心(30=春日野)が7勝1敗で中日を終えた。前日7日目は全勝対決で横綱鶴竜に敗れたが、この日は嘉風を突き出し、連敗を阻止。昨年11月8日に生まれた長女アナスタシアちゃんに会いたい。場所後の2月、西アジアの故郷ジョージアに帰国したい。師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)に許可をもらうべく、V戦線に残って好成績を残す。

 鬼の形相で栃ノ心が前に出た。192センチ、177キロの巨漢力士が嘉風に怪力を振るった。徹底した突き押しで、業師を土俵からはじき出した。「(嘉風から)どうやってもまわしが取れないから。“引かれる、引かれる”とドキドキしながら突っ張った」。1敗を守りホッとして笑った。

 娘に会いたい。昨年11月8日に愛妻ニノさんがジョージアで産んだ。名前は、97年にアニメ映画の主人公になった「ジョージアのお姫様」と同じアナスタシア。4400グラムで生まれ、2カ月を過ぎ、体重6キロを超えたビッグベビー。「お風呂が大好き。入るとわかると大はしゃぎで暴れるんだ」と目尻を下げる。…だが、まだ会っていない。

 ジョージアは直線距離で約8000キロ、モスクワやイスタンブール経由で空路約20時間もかかる。帰国する余裕はなかった。今場所後、巡業のない2月は絶好のチャンス。あとは師匠の許可を得るだけだ。だから好成績を残したい。

 この日、テレビ解説を務めた春日野親方は「絶対に中に入らせない気迫があった。(十両に)上がってきた時のような相撲だ」と褒めた。序ノ口デビューから11場所目の08年初場所で初十両初優勝。攻めを貫いていた20歳当時の若さが、よみがえった。師匠に好印象を与えることに成功した。

 数日に1度はテレビ電話で会う。初黒星を喫した前夜は、メールで送られてきた写真に癒やされた。その手でアナスタシアちゃんを抱くために、栃ノ心は負けられない。【加藤裕一】