貴乃花親方(45=元横綱)が大相撲春場所10日目の20日、弟子の十両貴公俊(20)が8日目の18日に付け人の序二段貴西龍(22)に暴行したことについて、暴行の発端を自身の行動が原因だと猛省した。京都・宇治市の朝稽古後に、今の心境を吐露。貴公俊を通常幕下以下が行う「ちゃんこ番」にするとともに、指導者として再スタートを切る覚悟を示した。

 朝稽古後、報道陣の前に現れた貴乃花親方は、沈痛な表情を浮かべた。「一連の私の、師匠の行動で負担をかけていたのかなと。貴公俊がこういうことを起こしてしまったということで、少なからず影響があってもおかしくない。包んでいきたい」。時折、目をつぶりながら、丁寧に言葉を選んだ。

 弟子の十両貴ノ岩への元横綱日馬富士関による傷害事件が発覚した昨年11月以降、貴乃花部屋を取り巻く環境は激変した。事件の対応を巡って、貴乃花親方が日本相撲協会と対立する姿勢を見せると、部屋全体が角界や世間から色眼鏡で見られた。福岡、東京、大阪の宿舎には連日報道陣が殺到するなど、さまざまな出来事が弟子への精神的負担となり、今回の暴力行為の引き金になったと分析した。だから「師匠の私の方が精進しないといけない。監督、指導をこれまで以上にしていく所存です」と、決意を新たにした。

 朝稽古中、被害にあった貴西龍に声をかけ、体に塩をかけておはらいをした。「元気でいて欲しいというですね。新弟子も1人入りましたので、その子にも影響がないようにしたい」と、心のケアに努めた。

 暴力行為により9日目から休場した貴公俊は、稽古場には姿を現さなかった。貴乃花親方は「ちゃんこ番をやらせています。出直しですね。『(新弟子が取る)前相撲からやりなさい』ということ」。来場所は幕下陥落が確実で、幕下以下の若い衆が行う雑務で初心を取り戻させ、再スタートを切らせる狙いだ。

 この日は午前11時ごろに役員室に出勤し、弟子で平幕の貴景勝の取組を見届けるなど、2日続けて午後5時過ぎまで常駐した。被害力士の取組も見ていたといい、「元気に取れていた。本人も大丈夫と言っていたので」。貴乃花部屋再建へ、師匠としての真価が問われる時がきた。

 ◆ちゃんこ番 師匠や力士が食べる食事(朝稽古後と夜の1日2回)を準備する係で、一般的に幕下以下の若い衆が行う。力士数が多い部屋は当番制にしたり、マネジャーや裏方もちゃんこ番を担当するなど部屋ごとにルールがある。ちゃんこ番は朝稽古を他の力士より早めに切り上げることもある。ちゃんこ番を取り仕切る「ちゃんこ長」を置く部屋もある。出世が早いと、ちゃんこ番をほとんど経験しないまま関取になる。