大相撲で初めて新型コロナウイルス感染が判明していた東京・江東区の高田川部屋の三段目力士、勝武士(しょうぶし、本名末武清孝=すえたけ・きよたか)さんが13日午前0時半、新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため都内の病院で死去した。28歳だった。

新型コロナ感染での死者は角界初。国内で20代の死亡は年齢が明らかになっている中では初とみられる。28歳の早すぎる死は、ウイルスの恐ろしさを改めて世間に伝える形となった。

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<医師で作家の鎌田實(みのる)氏(71=長野・諏訪中央病院名誉院長)>

勝武士さんは「しょっきり」でお客さんを喜ばせる魅力的な力士でした。まだまだ未来があっただけにショックです。20代から40代という若い世代の感染者は日本でも多いが、28歳という若さで亡くなったのは残念でなりません。

新型コロナウイルスは、重症化させないためにも初期診断と早期治療が大事になります。医療体制が追いつかず、発熱から4日たっての入院という初動の遅さが重症化につながりました。糖尿病の持病があったことも、リスクを高めた要因だと思います。

世界保健機関(WHO)の発表によると、新型コロナウイルスによる世界の致死率は2%ほどですが、糖尿病患者は9・2%にまではねあがっています。この感染症で分かったことは、血栓ができやすく血管が根詰まりすること。始まりは肺炎でも、そこに終わらず、循環器が悪くなり、脳梗塞や腎臓や肝臓にも影響が出る。今回の死因も多臓器不全でした。自粛生活が続くと、食べ過ぎや飲みすぎに陥りやすい。太りすぎないよう気をつけたいところです。

現役力士の死を無駄にしないためにも、先進国並みに多くの検査を受けられる医療体制の構築が急務です。PCR検査に、抗原検査、抗体検査を織り交ぜ、複合的に対応していくことが求められます。従来の常識が通じるか分からない未知のウイルスだけに、それぞれの検査の差を使いながら、早期の診断と治療につなげていくことが命を救うカギになります。

◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献した。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続ける。