第69回全日本相撲選手権が6日、東京・両国国技館で行われ花田秀虎(日体大1年)が36年ぶり史上2人目となる大学1年でのアマ横綱となった。

準決勝で大学の先輩の松園(日体大4年)を破ると、決勝では山口(近大4年)に快勝した。立ち合いですぐにもろ差しになり、一気に攻めて土俵際で一押し。勝負が決しても表情を崩さず、ガッツポーズも控えた。「興奮するけどそこをどう抑えるか。相撲は国技で礼儀を尊重する。横綱、大関もガッツポーズをしないので」。歓喜の瞬間はあえて感情を抑え込んだ。

和歌山商高2年時には世界ジュニア個人無差別級で優勝した実績を持つ。四つでも取れるが、大学入学後は同大相撲部の斎藤一雄監督の指導方針で押しを磨いているという。「まわしを探る動きが多かったが、取り口が変わった。全日本でも押しが光った」と手応え。斉藤監督は「非常に真面目で勝つことに貪欲。まだまだ進化途中」と大きな期待を寄せる。

コロナ禍で4月の入学直後に部活動は休止となり、故郷の和歌山に戻ったが、鍛錬は怠らなかった。帰省中は実家近くの高校のレスリング部や陸上部の練習に参加。瞬発力を養うトレーニングなどを行い「それが全部つながっているのかなと思う」と、他競技の動きを取り入れた。

36年前の84年に大学1年でアマ横綱となった久嶋啓太さんとは、同じ和歌山県出身で実際に指導を受けたこともあり縁がある。大相撲では久島海(元前頭)のしこ名で活躍した久嶋さんは現役引退後、田子ノ浦部屋を創設。当時の田子ノ浦部屋は春場所での宿舎を和歌山県に構えており、花田も相撲を始めた小学校2年生のときに稽古に参加したことがあった。「当時は小さかったので分からなかったけど、のちのちすごい人だと分かった。(久嶋さんが優勝した)全日本の動画も見たことがある。目標にしていた」。久嶋さんは12年に46歳で死去したが、思いを受け継いで快挙を果たした。

大学卒業後はプロ入りを志望している。あこがれは第58代横綱千代の富士。「自分の長所はスピード。さらに上の、プロでもっと上を目指したい」と意気込んだ。