大相撲名古屋場所(7月4日初日、ドルフィンズアリーナ)が幕内復帰3場所目となる前頭英乃海(31=木瀬)が9日、都内の部屋で稽古を行い、基礎運動を中心に調整した。

夏場所8日目の遠藤戦で脱臼した左足小指の不安もあり、本格的に体を動かす段階には至っていないという。代表取材に応じ「とりあえず踏ん張れることが一番なので。場所には間に合うけど、いつから申し合いしようかという感じ。(小指は)痛みもまだありますし、自分の意思でまだ動かせなくて。小指だけ動かせない。ほかの指が曲がってあとで小指がついてくる感じ」と現状を説明した。

小指の脱臼は、負傷した取組後の支度部屋で自ら「入れた」という。「病院は行っていない。支度部屋で座って自分で入れた。専属のトレーナーさんに見てもらって、きれいに入っていると言われたので」。9日目以降は足袋を履いて出場。ケガの影響もあり後半戦は1勝しか挙げられず、5勝10敗で終わった。

慣れない足袋をつけて「意外に滑らなかったけど、滑ってほかのところをけがしたら嫌だなって。(9日目の)輝戦がもったいなかった」と、本来の力を発揮できなかった。振るわない相撲内容に、埼玉栄高の先輩でもある武隈親方(元大関豪栄道)には「めっちゃ怒られた」という。「『素人みたいな相撲を取ってんなよ。何怖がってんねん』って。今回(夏場所)は東の支度部屋で取組後、取材をするところの手前に親方が座っている。自分の時間は武隈親方が毎日いる。それで怒られて。現役中は大関で立場が全然違ったから、アドバイスなんかもちろんもらえなかった。親方になったら違って、アドバイスももらえたり。うれしいですよ。武隈親方は男らしいし、さっぱりしているし。いい先輩です。おとこ気あるし。栄のOBで後輩はみんな好きなんじゃないですかね」と喜んでいた。

今月11日には32歳の誕生日を迎える。初土俵は12年夏場所で、当時は22歳。10年の歳月がたち「(手持ちが)2000円しかなくて(同期入門の)志摩ノ海関に速攻、お金を借りた。入って2日目で『えっ、ないの?』って。『ごめんごめん、返すから』って。あれから約10年たちますから」と“珍”エピソードも披露。弟の翔猿とともに兄弟幕内としても注目を集める。「年は取ったけど三役は(相撲界に)入った時からの目標。三役は1回は行きたい。今年中に最高位、6枚目を更新したい」と、意欲を燃やしていた。