西十両4枚目一山本(28=二所ノ関)が、初めての十両優勝を果たした。1差で追走していた荒篤山が敗れた時点で優勝が決まったが、大翔鵬を下して13勝目を挙げて花を添えた。

各段優勝は、初めて番付にしこ名が載った17年春場所の序ノ口優勝以来で「うれしい。今場所みたいに相撲を取れれば1つでも多く勝てると思う」と喜びを語った。荒篤山が勝って自身が敗れれば、決定戦にもつれ込んでいただけに「どきどきしながら相撲は見ていた」と心境を吐露。優勝が決まっても気持ちを切らすことなく、得意のもろ手突きから大翔鵬の上体を起こすと、懐の広さを生かしてはたき込みを決めた。

“脱サラ”から関取の座をつかんで話題となった。中大時代に全国学生相撲選手権16強などの実績を残して、卒業後は地元北海道の福島町役場に就職。16年9月に制度が変更した年齢緩和制限を利用し、役場を退職して17年春場所で初土俵を踏んだ。19年名古屋場所が新十両。長い手足を生かした突っ張りを持ち味にしている。

来年1月の初場所(9日、東京・両国国技館)では返り入幕が確実。幕内2場所目だった9月の秋場所では4勝11敗と苦しみ「大きく負け越して壁を感じた。幕内で前に出られなかった。手を伸ばして相撲を取らないといけない」と実感したという。今場所幕内で活躍した阿炎とは、体格と突き押しのスタイルが似ているだけに「(阿炎とは)よく比較されるというか、似ていると言われるので、理想の1つとして持って、自分の違うところも出していきたい」と話した。

師匠の二所ノ関親方(元大関若嶋津)が来場所中の1月12日に65歳の誕生日を迎え、日本相撲協会の定年となる。「(師匠に)しっかり勝ち越して褒めてもらえるように一から頑張りたい」と意気込んだ。

◆一山本(いちやまもと)本名・山本大生。1993年(平5)10月1日、岩内町生まれ。小学2年から相撲を始め、大野農高では3年時に国体道予選優勝。中大を経て福島町役場に勤務した社会人1年目の16年国体個人戦16強。16年9月の年齢緩和制限適用第1号の力士として同年12月に二所ノ関部屋入門、17年初場所に23歳で初土俵。19年名古屋場所新十両。21年名古屋場所新入幕。得意は突き、押し。187センチ、145キロ。