祖父が横綱という注目の2世力士対決は、幕内での経験の差が出ました。新入幕の王鵬は初日から3連勝と滑り出しは上々でしたが4日目以降は、さすがに疲れが出てきているのか本来の前に出る相撲が取れていません。それでも何とか前にという気持ちを見透かしたかのように、琴ノ若がうまく取りました。王鵬に右を差すように思わせて、意識をそっちの方に向けさせてからの、かわすように肩透かしを決めました。幕内でもまれている琴ノ若の経験が上回ったと言えます。ガムシャラに取ろうという気持ちが強い王鵬は疲れが出て当然。その気持ちは忘れないでほしいですね。

私も2世力士で注目され「親に恥はかかせられない」という気持ちはありましたが、親の七光など通用しない世界ですから、2世ということで特別に感じるプレッシャーはなかったですね。ただ将来的に2人には、王鵬は「大鵬」、琴ノ若は「琴桜」のしこ名を継ぐ可能性があります。私の場合は新関脇に上がった時に突然、「若ノ花」(のち若乃花)に改名されました。本人は全く知らず当日のスポーツ新聞で知って驚いたことを覚えています。横綱のしこ名ですから。「えっ、聞いてないよ~」と。2世力士の先輩として、余計なことかもしれませんが2人の行く末には、そんな運命が待っているかもしれません。しこ名は重いものですが、今はノビノビと取ってほしい。今は横綱の孫として注目されていますが、将来は「王鵬の祖父が大鵬」「琴ノ若の祖父が琴桜」と言われるように頑張ってほしいです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)