大相撲の大関経験者の幕下朝乃山(28=高砂)が27日、都内の部屋での朝稽古後に取材に対応し、過去の過ちをあらためて反省した。

朝乃山は9月の秋場所後の10月15日に、石川・七尾市で開催されたパーティーに参加。石川・羽咋市で9月に行われた石川県無形民俗文化財「唐戸山神事相撲」で最高位の大関となった畝傍山和弘(本名・畝和弘)さん(54)の祝賀披露会に、高砂部屋関係者の知り合いを通じて招待されたものだ。「僕ら2人が北陸出身だったこともあって」と富山出身の朝乃山と羽咋市出身の深井の2人で訪れた。

その祝賀会内で、髪結い実演のモデルとなった。朝乃山が大銀杏(おおいちょう)姿になると、ファンからは歓声や声援が多く飛び交ったという。そして、大銀杏姿の朝乃山の写真がネットに掲載されると…。SNSを中心に批判の声が多く挙がった。

大銀杏は通常、十両以上の関取のみが許されるもの。いくら大関経験者だからとはいえ、今は幕下であるため結う資格はない、という類いの声が多く上がった。だがそれは、本人も重々承知していた。髪結い実演があると知った際「部屋の裏方さんに『僕がやっても大丈夫なんですか』って聞きました。そしたら『親方にも許可をもらっているので大丈夫です』と言われました」と確認したという。

確かに通常、大銀杏は関取のみが許されるものだが、巡業での初っ切り、花相撲での髪結い実演などで、例外的に幕下以下の若い衆が結うこともある。今回の髪結い実演は、招待されたアマチュア相撲関連の祝賀会で行われたイベント。例外に該当する類いのイベントである上、朝乃山は慎重を期して部屋関係者に確認し、師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)らなどの許可をもらって髪結い実演のモデルになった。自ら希望してモデルになったなどというわけではなかった。

今回の件がSNSを中心に騒ぎになったことを、朝乃山自身はもちろん知っていた。関連するコメントも見た。こういう時、どうしても目に付くのが「キャバクラ」の文字。6場所出場停止処分のきっかけとなったコロナ禍でのキャバクラ通いの件が、今もついてまわるが言い訳はしない。「もともとは僕がキャバクラに行ったのが自覚のなさでした」と受け止めている。もしも関取として髪結い実演に参加していれば何も問題はなかった。三段目まで陥落するきっかけを作った自身の過去の行為を、あらためてしっかりと反省した。

髪結い実演については反省するところはあったが、久しぶりに本場所以外の場所で多くのファンと直に触れ合い「たくさん応援してくれる方がいてすごくうれしかった」と励みになった。ファンあっての大相撲。まさに、それを実感した。だからこそ「ファン感謝祭に参加できなかったのは悔しかったです」という。

6、7日に国技館で開催された「大相撲ファン感謝祭2022」は幕内力士を中心とした関取衆が参加し、来場した多くのファンとさまざまなイベントを通して触れ合った。当日の様子を日本相撲協会の公式YouTubeチャンネルで見て「(オープニングセレモニーでの)関取紹介の時の紹介文とか僕ならどういう風に紹介されたんだろうと思いました。あとコロナ禍だけどたくさんのファンと触れ合っていた。その場にいなかったのが悔しかったですね」と心境を明かした。

7戦全勝なら十両復帰が確実だった秋場所は、六番相撲で負けて6勝1敗で終えた。九州場所(13日初日、福岡国際センター)での番付は幕下5枚目前後が見込まれる。「今年で(関取復帰を)決めるという思いです。早く上に上がりたい」と一年納めの九州場所でこそ、十両復帰を決める強い覚悟を示した。関取に復帰すれば巡業や協会公式イベントにも参加できる。当然、髪結い実演も問題なし。苦い思いを経験し、また一皮むけた朝乃山。あとは、土俵の上で結果を出すだけだ。【佐々木隆史】