<大相撲初場所>◇6日目◇13日◇東京・両国国技館

幕内格行司の式守勘太夫(54=朝日山)が157年前の1866年(慶応2年)から受け継がれてきた軍配を持って土俵に立った。これは2代勘太夫から歴代の勘太夫に継承されてきた軍配「譲り団扇」(ゆずりうちわ)。近年は相撲博物館に保管され、毎年初場所の数日間だけ使うという。

この日、遠藤-輝、碧山-阿武咲の2番を無事に合わせた12代勘太夫は「今日は緊張しました。差し違えたらどうしようかと思いました」と特別な日を終えて胸をなで下ろした。

軍配には「一心一声」と書かれ、もう一方の面には「如神」とある。つまり、「行司の一心一声は神の如く」と解釈できる。勘太夫は「この軍配を”使う”というよりは、この軍配に『令和の土俵を見てください』という気持ちです。そう考えるとロマンがありますよね。この軍配を使っている時に感じるのは、一体この軍配で何千番を裁いてきたんだろうということです」と話す。

慶応2年は、徳川慶喜が江戸幕府の15代将軍に就任した年。明治、大正、昭和、平成、そして令和まで受け継がれてきた。「明治維新も経験し、関東大震災や東京大空襲も免れてきた軍配。どこにあったんだろうと考え、ここにあることの重みを感じます」と勘太夫。この日は、大相撲の伝統文化としての側面にも光が当たった。【佐々木一郎】