大相撲の新弟子の減少傾向が続いている。学校の卒業時期と重なる春場所は「就職場所」とも呼ばれ年6場所で最も入門者が多いとされるが、今回受検したのは34人。義務教育修了が受検資格に定着した1973年以降では2012年と並び最少だった。3代目若乃花、貴乃花による「若貴ブーム」で最多の160人を記録した92年から約30年。最盛期の4分の1以下にまで落ち込む事態に関係者たちも頭を悩ませている。

入門者減に歯止めがかからない。新弟子検査の受検者は今年1月の初場所8人、学校の卒業時期と重なり「就職場所」ともいわれる春場所は2012年と並び過去最少の34人、夏場所は5人と、現段階で計47人。義務教育修了が受検資格に定着した1973年以降で過去最少ペースとなっている。

深刻な事態に小結大栄翔は「新弟子たちが入らなければ大相撲は続いていかない」と危機感を募らせた。平幕の琴恵光も「最近はコロナの影響で力士と触れ合う機会がなくなっている。それもつながっているのかな」と私見を述べた。

1973年以降では、年間100人を超える新弟子検査の受検者が当たり前だった。社会現象とも称された「若貴ブーム」はその最盛期に当たり、92年は223人(春場所は160人)、93年は221人(同156人)と2年連続で200人を超え。

ただ、2000年代に突入すると少子化と子供の相撲離れもあり、状況は一変した。02年には91人(同50人)と100人を割り、06年以降は17年連続で100人割れ。近年は新型コロナウイルスの影響を受けてスカウト活動に制限がかかり、22年(61人)、23年(66人)と2年連続で60人台を記録している。

徐々にコロナ前の生活に戻りつつある中、次世代の才能を発掘するために必要なことは地道なスカウト活動を行うことしかない。日体大相撲部時代にアマチュア横綱に輝いた花田秀虎が米NFL挑戦を目指してアメフトに転向したように、若い有望株が他競技に転向するケースを何としても避けたいところだ。

日大大学院で「相撲文化継承への提言」と題した論文を書いた大栄翔も、その思いが強い。自身の論文でも主張したように、「力士たちが地域に入って、子どもたちが相撲と触れ合う機会を増やさないといけない」と訴える。高砂親方(元関脇朝赤龍)は、今後さらに有望株のスカウトに力を入れる考えで「若い人たちに相撲の魅力を伝えたい」と話した。【平山連】