東前頭17枚目の碧山(37=春日野)が、審判の親方衆による約4分もの長い協議の末、行司軍配差し違えで白星を手にした。

立ち合いから遠藤と、一進一退の激しい突き合い。だが碧山が、かがみ込んでからの左のど輪で、グイッと押し込むと、顔を横向きにして、相手の反応が遅れた隙を逃さず、回転の速い突っ張りを連発した。土俵際で、前のめりに倒れ込んだ碧山が落ちるのと、ヒラリと左にかわした遠藤のつま先が出るのが、微妙なタイミング。

取組後、碧山は「こんなに(協議が)長かったのは初めて。でも、いい相撲だったから、これで負けていたら悔しかった。久しぶりに気持ちいい相撲だったし、よかった」と、ホッとした表情で振り返った。「自分が攻めていたし、相撲では勝っていたけど、勝負では、最後にどっちが先に出たかまでは分からなかった。でも、相撲では勝っていたので、せめて同体取り直し、負けだけは避けたかった。(親方衆が)しっかりと見てくれていて、ありがたかったです」と続けた。

6月に37歳の誕生日を迎えたが、最近の好物は「煮物」と即答するヘルシーな食生活の影響もあってか、200キロ近かった体重が、今場所前は177キロまで落ちた。だが「暑くて食欲も落ちるけど、ご飯を1杯じゃなく、2杯、3杯と食べるようにしている。そのおかげで、184キロまで戻った」と、体重が戻ったことで、持ち前の突きも重さが出て、この日の勝ちにつながった。

37歳。関取衆では38歳の前頭玉鷲に次ぐ2番目の年長だ。ケガの予防も兼ねて、今場所中は毎朝5時30分に起床し、若い衆と一緒に同6時30分には稽古場に降りている。「昔と違って、体をほぐすのにも時間がかかるしね」と、じっくりとストレッチし、若い衆のぶつかり稽古にも20番前後は例日胸を出している。

今場所は、負け越せば十両陥落の可能性もある番付。「考えないようにしても考える。やったことがない相手も増えてきた」と、初日には昭和以降最速の所要3場所で新入幕を果たした19歳の伯桜鵬に敗れ、好対照のベテランとあって、引き立て役のようになってしまった。ただ、まだ老け込むつもりはない。

仮に今場所で9敗以上を喫すると、十両陥落は確実となる。現在、春日野部屋の幕内力士は碧山ただ一人。名門春日野部屋から幕内力士が不在となると、1967年(昭42)秋場所以来、実に56年ぶりの事態に陥る。そんな重圧を一身に背負う立場だけに、後進の指導にも熱が入る。「ここから頑張っていかないとね」と、帰り際に笑顔で話したブルガリア出身の碧山。名門の看板を背負う責任感いっぱいで、今場所に臨んでいる。【高田文太】

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