7月の名古屋場所で優勝決定戦に敗れて初優勝を逃した東前頭筆頭の北勝富士(31=八角)が、雪辱の3日連続大関撃破を果たした。

霧島のお株を奪う豊富な運動量と粘りで、最後は寄り切り。初日の貴景勝、2日目の豊昇龍に続き、3日連続の大関戦白星は19年初場所で栃ノ心、豪栄道、高安の3大関に勝って以来、自身2度目となった。またこの日、日本相撲協会は幕内優勝1度で東幕下37枚目の徳勝龍(37=木瀬)の引退、年寄「千田川」襲名を発表。現役力士から別れを惜しむ声が相次いだ。

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労を惜しまない北勝富士が、泥くさく“銀星”を3つ並べた。立ち合いから低い体勢を維持し、霧島にまわしを与えなかった。相手のいなしに、土俵際まで体を泳がされても、相手の突進をひらりとかわした。直後に頭をつけて、じりじりと攻めると、根負けした相手が土俵を割った。「我慢して、しぶとく取れた。大振りしない、細かく攻めることを心がけた」。隙を見せたら逃さない4歳下の大関に、運動量で上回った。

先場所は幕内では自己最多を1勝更新する12勝を挙げ、初めて優勝決定戦に進んだ。だが大一番で当時関脇の豊昇龍に敗れ、初優勝はまた1人、先を越された。「一生の悔い」。新大関となった豊昇龍に雪辱した前日2日目に、先場所後にそう思っていたと明かした。それが今場所には新たな発見に変わった。「あの緊張感の中でやれたのはすごい経験」。同体取り直しの末に勝った初日貴景勝戦も冷静に2番取り切った。

土俵外でも労を惜しまない。「土俵に上がれば北勝富士、家に帰ればパパ」。東京場所は起床と同時に2歳の長男のおむつを替え、帰宅すれば風呂に入れる。「昔は“常に相撲”だったけど、家でストレッチしていても息子が寄りかかってきてパパになる。オンとオフの切り替えができる」。8月20日、栃木・小山市での巡業で「夢だった」長男との土俵入りも果たした。

最近は長男も、自身が力士であることが分かってきているという。年を重ね、けがも増えた。それでも名古屋での経験を経て、自宅に戻って思った。「もうちょっと現役で頑張ろう」。3日連続大関撃破は序章。家族の力を借り、大輪の花を咲かせる。【高田文太】