大相撲の第64代横綱を務めた米国ハワイ出身の曙太郎(旧名チャド・ローウェン)さんが、今月上旬、都内の病院で心不全のため亡くなっていたことが11日、日本相撲協会から発表された。54歳だった。曙さんは最後に出場した00年11月の九州場所で、14勝1敗で11度目の優勝。同場所で唯一の黒星、つまり大相撲での最後の黒星をつけた西岩親方(元関脇若の里)がこの日、都内で当時を振り返りつつ、故人をしのんだ。

同場所が新三役の小結だった西岩親方は、当時の白星を「よく覚えている」という。曙さんとは2度目の対戦。初顔合わせだった99年名古屋場所は「見たことのない大きさの人だったので、正直、怖かった」と、恐怖心があったことばかり強く記憶に残っている。そして「手も大きくて、すごい力で土俵下まで吹っ飛ばされた」と、押し倒された。

そんな苦い記憶から「真正面から攻めたのでは勝てないと思った」と、横から崩すことを徹底し、2度目の対戦で白星をつかんだ。「曙さんが引退されてからは、会うと必ず冗談で『オレに最後に勝ったやつだ』と言われました。それだけ覚えてもらえていたのは、うれしかったし、光栄ですよ」。西岩親方自身、3日目に挙げたこの白星で勢いに乗り、9勝6敗で新三役場所を終え、続く01年初場所で新関脇に昇進していた。

この日、訃報に接し「あれだけ強かった方が亡くなるなんて…。信じられない。残念です」と、悲しみの表情を浮かべた。同時に「あの白星が、その後の自信になった」と、感謝の思いも口にしていた。