東前頭16枚目の友風(30=中村)が、6年2カ月ぶりに幕内で勝ち越した。同14枚目の佐田の海(38=境川)をはたき込み、8勝目を挙げた。
支度部屋に戻ると「うれしいです。味わったことがない感じを味わっています」としみじみ言った。前回の幕内での勝ち越しは、2019年名古屋場所、西前頭7枚目で11勝を挙げた時。序ノ口デビューから13場所連続で勝ち越していたころだ。「その時よりうれしいです」と話す理由がある。
その2場所後、右膝を大けが。一時は切断の可能性が浮上したほど。復帰に1年以上かかった。今も腓骨(ひこつ)神経まひで、右膝から下の感覚がなく、足首が動かない。下肢機能障害5級に認定され、障害者手帳を保持している。
復帰から16場所かけて幕内に戻ったが、壁に当たった。ケガの後、3場所務めた幕内は、いずれも負け越し。ついにその壁も超えた。
「ケガしてからの数年間は、本当に地獄の苦しみだった。そん時を思えば、今の姿は想像できない。表現できない特別な思いがありますね」
師匠の中村親方(元関脇嘉風)には、毎日声をかけられながら土俵に上がってきた。「いつも言葉は心に残るのですが、今場所は特に響きました」。どう勝つかを教えてくれるのではなく、友風がこの体で何を表現するのか、何のために土俵に上がっているのかを説いてくれた。
残り2日。友風は「気を抜かずにもう1回、自分の相撲に目を向けたいです」と足元を見つめた。【佐々木一郎】

