「エクソシスト」が公開された74年の夏は、受験勉強真っ最中の高校3年生だったこともあり、その合間に見たいわく付きのホラー作品には強烈な印象が残っている。
悪魔に取り憑(つ)かれた少女の体はあり得ない形にねじ曲がり、演じる当時14歳のリンダ・ブレアの口からは卑猥(ひわい)な言葉が連呼された。そしてマックス・フォン・シドー演じる老神父の立ち姿…。
ウィリアム・フリードキン監督による悪魔VS祈とう師の対決図式と、それにまつわる醜怪な描写の数々は、その後多くの作品に踏襲されている。
14日公開の「ヴァチカンのエクソシスト」は、カトリック教会の実在のエクソシスト(悪魔はらい師)ガブリエーレ・アモルト神父(1925~2016年)の著書を原作に、オスカー俳優ラッセル・クロウが初のホラーに臨んだ作品だ。17年にはフリードキン監督が「悪魔とアモルト神父-現代のエクソシスト-」と題したドキュメンタリー映画を撮ったほどで、半世紀を経て、ついにリアル・エクソシストの登場である。
アモルト神父自身、悪魔払いの依頼のうち、98%は精神疾患などの要因によるものと明言している。残りの2%が科学で解明されない「何か」によってもたらされているというわけだ。
舞台となるのは1987年、スペインのサン・セバスチャン修道院。夫を亡くしたシングルマザーの米国女性が10代の娘と息子を連れて訪れる。夫の唯一の遺産だったこの朽ちかけた修道院を改修し、売りに出すのが目的だ。
そこを仮住まいとした3人家族に異変が相次ぎ、何かに憑依(ひょうい)された息子は異様な変貌を遂げていく。
この教区のトーマス神父の依頼で訪れたアモルト神父は、少年の姿を借りた憑きものが、知りうるはずのない神父の過去を語り出すのを目の当たりにし、「悪魔」の仕業と確信するが…。
戦争映画にオカルト風味をまぶした異色作「オーヴァーロード」(19年)を撮ったジュリアス・エイヴァリー監督は、今作でもエンタメ力を存分に発揮しているが、主舞台の修道院やヴァチカンの描写は歴史を映してしっかりと重い。
経験豊かなアモルト神父が修道院にまつわる過去の因縁をひもとく過程で登場する古書の数々にもリアルな質感があり、重厚なミステリーの匂いが香ばしい。一方で、アモルト神父(クロウ)はスクーターに乗って登場し、若きトーマス神父(ダニエル・ソヴェット)との刑事ドラマのようなバディ感が楽しい。
母親役のアレックス・エッソーは「絶叫女優」として知られる適役で、「ホラー映画が大好き」という息子役デソウサ・フェオニーも体当たりの好演だ。そして、教皇役フランコ・ネロが貫禄の人間味を発揮して配役もしっくりくる。
アモルト神父はわが道を行く一匹おおかみのキャラクターだが、教皇の信任だけは厚く、それを武器にヴァチカン上層部の官僚主義を蹴散らす様子も気持ちいい。キリスト教との距離がある分、欧米の観客よりエンタメ性を堪能できた気がする。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




