2021年の芸能界でブレークしたり、バズる「急上昇」候補は-。日刊スポーツが注目する新星たちを「2021年『急上昇!』」と題し、随時掲載でお届けします。

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シンガー・ソングライターにゃんぞぬデシ(22)が22日、約2年ぶりのデジタルシングル「風とイルカと恋」をリリースした。温かくて懐かしさを感じるサウンド、世界観にマッチしたミュージックビデオが好評だ。4人組ロックバンドDISH//に楽曲提供するなど、才能豊かな新星に、新曲への思いを聞いた。前編後編の2回、お届けする。

新曲リリースから13時間後に取材が始まった。「あまり眠れませんでした」といいつつ、反響について「2年ぶりにリリースさせていただいたんですけど、『2年間待ったかいがあった』『2年間の音楽が来た』というようなお言葉もあって。歌詞もサウンドもミュージックビデオも、全部こだわったんですけど、ファンのみなさんの反応もいろんな面でみてくださっている。『伝わっているな』ってうれしかったです!」と興奮が収まらない様子をみせた。

同曲は複数のラジオで流され、「懐かしい感じがする」「耳に残るいい曲」などと評価されている。恋歌を1年間通じて展開する企画「にゃんぞぬデシの恋日記」の第1弾で、甘酸っぱい初恋の様子が描かれている。「ある時、『好き』っていう気持ちが、もし目に見えたら、いとしいと思う誰かの元に、飛んでいってしまうだろうなって思ったんですよ。それがイルカみたいな物体が空を泳いでいくのかなって」と楽曲の独特な世界観について明かした。続けて「ただイルカって海の生き物だから、空で飛ぶのは呼吸器官に苦しいはず。それでも苦しさよりもいとしいと思って誰かの元へ飛んでいく感じが、恋をする気持ち、熱中する気持ちに似ているなって」と熱弁した。

歌詞は横浜市の山下公園に赴いて書いたという。「イルカだし、海に呼び寄せられるように行きました」。曲を作る際には友達との印象深いやりとりや自身の経験などを織り交ぜる。「ちょっと体験したことを自分の頭の中で想像して、ストーリーを作ったりして入れ込みます」。

音楽プロデューサー島田昌典氏とタッグを組んで楽曲を制作した。昨年9月ごろにサビだけ、ワンコーラスだけといったものも含めて20曲ほど作り、その中から5曲ほど厳選。同曲はサビだけができており、他のパートを付けて同11~12月ごろに完成したという。「この曲は歌詞を結構考えました。向き合った時間は(普段より)長かったですね」と振り返った。

島田氏から故・大瀧詠一さんの音楽性として知られる「ナイアガラ・サウンド」というテイストにすることを提案された。にゃんぞぬデシは以前、ワンマンライブで大瀧さんの楽曲をカバーしたこともあったことから二つ返事で快諾。デモテープで温かみのある音源が送られてくると「聞いた瞬間にイントロから広い空と海が浮かびました」とイメージ通りだった。

レコーディングにもこだわった。懐かしく、温かなサウンドに仕上がったのは、アナログテープで録音したからだ。自身も下積み時代にカセットテープでデモテープをとっていたといい「もうテンション上がっちゃって。自分が使っていたカセットテープの巨大版。取り直しがきかないから、生なサウンドになっています」。楽器も島田氏のスタジオにあるティンパニーやチェンバロ、12弦ギターなどを使用した。唯一無二の音色ができあがった。

「にゃんぞぬデシの恋日記」企画は1年間通して数曲リリースする予定だ。「恋ってなるといろんな気持ち、関係性があったりすると思うんです。今回は初恋の曲だけど、いろんな地点の曲を作っていきたいなって思っています」。

最後に、歌の中で初恋は成就したのか聞くと数秒間考え込んで「どうなんだろう…私がいちリスナーとしては、なんかかなわそうだなって。聴いた方に託したいです」と笑った。【佐藤成】

(次回後編に続く)

元気よくジャンプするにゃんぞぬデシ(2021年5月撮影)
元気よくジャンプするにゃんぞぬデシ(2021年5月撮影)
カメラに向かって笑顔を見せるにゃんぞぬデシ(2021年5月撮影)
カメラに向かって笑顔を見せるにゃんぞぬデシ(2021年5月撮影)