ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモンら豪華スターが共演した大ヒット映画「オーシャンズ」シリーズをオール女性キャストでリブートした「オーシャンズ8」。「オーシャンズ」シリーズでクルーニーが演じたカリスマ的な大泥棒ダニー・オーシャンの妹をサンドラ・ブロックが演じ、アン・ハサウェイ、ケイト・ブランシェット、リアーナら豪華な女性たちが集結して大胆不敵な犯罪計画を実行する物語です。そんな本作は今月8日に全米公開され、週末3日間で4150万ドルの興行を記録し、「オーシャンズ」シリーズを上回る大ヒットとなりました。ニューヨークで毎年行われるファッションの祭典メットガラを舞台に女性泥棒集団が高価な宝石を盗む本作には、有名セレブが多数カメオ出演していることでも話題。そんな中、デイモンがオリジナル作で演じたライナス役でカメオ出演したものの、出演シーンは編集で全てカットされたと報じられました。

 米メディアは、デイモンがセクハラ問題でハリウッドを激震させた大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏を擁護するような発言をしたことが原因ではないかと伝えています。デイモンはセクハラ被害を告白する#MeToo運動に対し、「言動には幅がある。お尻を触ることと、子供に性的虐待を加えることは違う」と発言。セクハラ告発は支持するとしながらも、「その全てを一括りにするべきではない。報復に多くのエネルギーを割いているように思う」とコメントしたことで炎上。アカデミー賞脚本賞を受賞した出世作「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(98年)など長年にわたってワインスタイン氏と関係があったこともあり、女性が主人公の本作にはふさわしくないと判断されたのも当然の流れなのかもしれません。メガホンをとったゲイリー・ロス監督は、デイモンのシーンをカットした理由について、「映画のストーリー構成のため」とコメントしていますが、実際には公開前に多くの女性がデイモンの出演シーンをカットするよう求め、2万8000人以上が嘆願書に署名したと伝えられています。

 女性をターゲットにした作品だけに、世論に敏感に反応したことが興行面での成功につながったとの指摘もありますが、ハリウッドではワインスタイン氏のセクハラ騒動から8カ月以上経った現在も新たなセクハラ被害が次々と明るみになっており、この問題は依然として終結する気配はありません。最近もシルベスター・スタローンから90年代にセクハラ被害を受けたとする女性の訴えを米ロサンゼルスの地方検察局が再捜査していると報じられたばかり。また、ウォルト・ディズニー・アニメーションとピクサー・アニメーションのチーフクリエーターで、「トイ・ストーリー」や「カーズ」シリーズなど多くのピクサー作品を手掛けてきたジョン・ラセター氏がセクハラが原因で年内にディズニーを退社することも発表されています。ラセター氏は女性スタッフの体を触ったり、キスをする、抱きしめるなどの行為を日常的に行っていたと昨年11月に報じられ、休職を余儀なくされていました。

 男性が主役の映画が全体の7割以上というハリウッドにおいてキャストのほとんどが女性という「オーシャンズ8」がヒットしたことで、今後も女性が主役の作品に注目が集まることになりそうです。本作は日本では8月10日に公開されます。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)