「エンタメの火曜日」第5週は特別版をお届けします。関西発アイドルグループ「たこやきレインボー(たこ虹)」を卒業した堀くるみ(21)が、9月4日から大阪・ABCホールで始まる漫才コンビ「矢野・兵動」兵動大樹と落語家桂吉弥のダブル主演舞台「はい! 丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」に出演する。舞台初挑戦に「自分らしさを大切に、みてもらった人に『明日も頑張ろう』と思ってもらえるような舞台を届けたい」。【取材・構成=松浦隆司】

舞台「はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」に出演する堀くるみは、ポスターを持ち笑顔を見せる(撮影・上山淳一)
舞台「はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」に出演する堀くるみは、ポスターを持ち笑顔を見せる(撮影・上山淳一)

8月上旬から始まった稽古では、共演者の迫力に圧倒されることもあった。いまは違う。初舞台に向け、ワクワク感とともに手応えを感じている。

堀 自分の中ではけっこうできるようになってきた。そのときに起こった感情で動けるようになってきた。ちょっとだけ余裕が出てきたのかな(笑い)。

不動産営業マンの菅谷(兵動)と顧客の林田(吉弥)を中心に、人々の悲喜こもごもを描く「はい! 丸尾不動産です。」の第3弾。町のスナックを舞台にしゃべくり喜劇が展開される。堀の役柄はスナックにアルバイトで雇われようと面接に訪れるナゾの女性「栗子ちゃん」だ。

舞台「はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」の台本読み合わせを行った堀くるみ(撮影・上山淳一)
舞台「はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」の台本読み合わせを行った堀くるみ(撮影・上山淳一)

堀 テンションが高く明るい。外面はいいが、菅谷さんらに見せる素の部分とのギャップが激しい。すごく切り替えが難しい。リアルな感情を持って演じなければ、単なるコミカルさだけが目立ってしまうコメディーになってしまう。

演出・プロデュースのカンテレの木村淳氏からは「その人物の感情を動かして、生きているところを見せてほしい。そうでなければ伝わらない。フィクションの世界だけど、感情がフィクションではダメ」とアドバイスを受けた。8月中旬から始めたことがある。「栗子ちゃん日記」だ。

堀 そのときどきの栗子ちゃんの感情の変化や、心の変遷を想像して書いています。

初舞台はオーディションを経て、出演が決まった。 

堀 10歳のときに、事務所に入り、レッスンを受け始めました。そのとき「お芝居って楽しいな」って思った。みるのは(もともと)好きですが、自分が自分ではない何かになるのは楽しいなと思った。お芝居に挑戦してみたいという気持ちはずっとあった。

たこ虹として活動しながらも、舞台やドラマの魅力に引き寄せられた。

堀 1人の女優、俳優さんが毎回違う、いろいろな役を演じている。普段の自分の生活に照らし合わせて「いまの自分の状況似ているな」とか、共感が生まれるのが魅力です。いま生きている世界とは別の世界があるようで、おもしろかった。

たこ虹ではリーダーとしてメンバーとともに歩んできた。初舞台の稽古では一体感を感じている。

堀 劇中、栗子ちゃんが歌うシーンがあります。兵動さん、吉弥の座長2人だけではなく、共演者のみなさんが、どんな歌がいいのか、いっしょに考えてくださる。みなさん、それぞれがリーダーだけど、みんなで1つのものをつくっていくんだという感覚になります。

台本読み合わせの休憩中に桂吉弥(中央)らと話す堀くるみ(左)(撮影・上山淳一)
台本読み合わせの休憩中に桂吉弥(中央)らと話す堀くるみ(左)(撮影・上山淳一)

いよいよ、憧れの舞台に立つ。

堀 栗子ちゃんは私が持ち合わせていないところを持っている。舞台では私の違う面を見せることができると思う。私のことを知っている方も、喜んでもらえる部分があるかな。

長引くコロナ禍の影響でエンターテインメント業界も苦境にあえいでいる。感染拡大に伴い、仕事や家庭でのストレスを抱える人も多い。

堀 毎日が、しんどいなと思う方もいらっしゃると思う。この舞台をみて「明日も頑張ってみようかな」。ちょっとでも明るくなれたら…。こんなときだからこそ、しんどい毎日を少しでも忘れられる時間になればいいなと思う。

堀が新境地に挑む。

台本読み合わせを行う堀くるみ(撮影・上山淳一)
台本読み合わせを行う堀くるみ(撮影・上山淳一)

◆「はい! 丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」 寂れた町の寂れたスナックを舞台に、うだつが上がらない不動産屋の営業マン菅谷(兵動)と、顧客の林田(吉弥)を中心に展開するワン・シチュエーション喜劇。過去2回公演は暗転、セット転換、休憩なしで会話のやりとりが展開。笑いの中にも強い社会性のあるメッセージが込められていると大好評で、リピーターが続出した。

脚本は「ハゲタカ」などのヒットドラマを手掛けた古家和尚氏。演出は、ドラマ「幽かな彼女」、舞台「それいゆ」などを手掛けたカンテレの木村淳氏。シリーズ第3弾は「本日、家で再会します」。出演は兵動大樹、桂吉弥、佐藤太一郎、施鐘泰(JONTE)、近藤頌利(劇団Patch)、堀くるみ、安藤夢叶、未知やすえら。大阪・ABCホールで9月4~7日、兵庫・アクリエひめじ中ホールで10月3日。

(2021年8月31日本紙掲載)