< 本日のごのへのごろく 「鏡のよう 人生を映す ヒトの声」>


 会ったことがない人でも、声を聞いただけで、「良い人そうだなぁ」あるいは「なんだか嫌な感じがするなぁ」と、その人のことを想像したこと、ありませんか? 会ったことがある人に対しても、声だけで「不機嫌そうだな」なんて思うこと、ありますよね。性格や調子は声に出ます。それだけでなく、体型や体格も出るんです。今回はトーク編第34回「声は究極の個人情報」です。

J-WAVE『GROOVE LINE』スタジオでピストン西沢さんと五戸美樹。番組内「MINMINDAHA QUIZ MASTER」(月~木 17:40~)レギュラー出演中(2017年10月)
J-WAVE『GROOVE LINE』スタジオでピストン西沢さんと五戸美樹。番組内「MINMINDAHA QUIZ MASTER」(月~木 17:40~)レギュラー出演中(2017年10月)

 ■「声が低い」=「身長が高い」■

 声を出すのに大きな役割を占める「声帯」の長さは、身長の高さに比例します。もちろん個人差はありますが、身長が高いと声帯は長く、低いと短くなります。

 声帯の長さによって地声の音域は変わります。声を出すのは、楽器で音を出すのと似ているので、リコーダーで考えてみてください。高い音が出るソプラノリコーダーは短く、低い音が出るアルトリコーダーは長いですよね。同じように、身長が高いと声帯が長いので声は低くなり、身長が低いと声帯が短いので声は高くなる、ということです。

 低い声が魅力的な、お笑いコンビ「麒麟」の川島明さんの身長は179cm。(川島さんは地声よりさらに低く出しているようにも聞こえますが)声だけで身長が高そうな方を想像しますよね。

『橋本マナミ ディナー&トークショー』で司会を務めた五戸(2017年9月、京都タワーホテル)
『橋本マナミ ディナー&トークショー』で司会を務めた五戸(2017年9月、京都タワーホテル)

 ■「ハゲー!」から想像する性格■

 身長だけでなく、体型も声に出ます。ふくよかな方は広がる声に、痩せ型な方は細い声になる…そして、体の形だけでなく、性格も声に出ます。某議員の方が「ハゲー!」と怒鳴りつけた音声が一時期よくニュースで流れましたが、あの声を聞いて「良い人そうだな」と思う方はいないと思います。性格・心情・調子は声に出るんですね。

 そして人の性格・心情・調子は変わりますので、声もそれに従い変わっていきます。自分にコンプレックスがある方は、違う自分になろうとして、“作り声”になりがちです。

 ■内臓も足首も声を変える一因■

 驚くべきは、声に出るのはそれだけではないということ。アメリカでは、「声で病気を見つける」という研究も進んでいます。内臓が悪ければ、それが声に表れるということ。足首の捻挫でも声は変わるし、まばたきひとつにしても、声は音程が下がります。

声優事務所「スチール・ウッド・ガーデン」で声優の卵たちにトークレッスンを行いました(2017年9月)
声優事務所「スチール・ウッド・ガーデン」で声優の卵たちにトークレッスンを行いました(2017年9月)

 ■専門家は「がん」を声で見抜く■

 取材させていただいた声の専門家・山崎広子先生は、国会中継で話している国会議員の声を聞いただけで、がんを患っていることに気づいたご経験があります。専門家の方は本当に声だけで、身長・体格・病気・性格・家族構成から過去の仕事まで見抜いてしまいます。

 全て声に出るんです。山崎先生は「声は究極の個人情報」そして「声は人生のレコーダー」とよく言われます。

 ■声を形成するのは身体の全て■

 なぜ声に出るのか…それは、声というと一見、声帯だけで出しているように思われがちですが、私たちは、全身を使って声を出しているんです。つま先から頭のてっぺんまで、全て、声を出すときに使っているんです。無意識のうちに。

 怖いほど、声は人間の大きな部分を占めている…そして、その声を「聞く」ことも、人に大きな影響を与えます。

 (次回トーク編は第35回「聴覚は脳に大きく作用する」の予定です)

【五戸美樹】(日刊スポーツ・コム芸能コラム「第55回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」)

取材後、山崎広子先生と。
取材後、山崎広子先生と。

 【参考図書】山崎広子先生の著書『8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声』(角川新書)、『人生を変える「声」の力』(NHK出版)。

 ◆山崎広子(やまざき・ひろこ)国立音楽大学卒業後、複数の大学で音声学と心理学を学ぶ。音が人間の心身に与える影響を、認知心理学、聴覚心理学の分野から研究。音声の分析は3万例以上におよぶ。また音楽・音声ジャーナリストとして音の現場を取材し、音楽誌や教材等への執筆多数。「音・人・心 研究所」創設理事。NHKラジオで講座を担当したほか、講演等で音と声の素晴らしさを伝え続けている。日本音楽知覚認知学会所属。