現在、落語協会(柳亭市馬会長)の真打ちは200人を超え、東西あわせて落語家の数も800人を超えている。落語ブームの中で飽和状態となっている。そのため、落語芸術協会では入門時の年齢制限を35歳とし、前座も現在30人もいるため、二つ目に昇進して前座に欠員ができた時に、新たに前座とするなどの制度改革も決めた。増え続ける入門希望者に歯止めをかけることに重い腰を上げた。

そんな中、落語協会で5人の新真打ちが誕生する。志ん橋門下の駒次改め古今亭駒治(39)、さん喬門下のさん若改め柳家小平太(49)、花緑門下の花ん謝改め柳家勧之助(36)、正蔵門下のたこ平改め林家たこ蔵(39)、菊千代門下のちよりん改め古今亭駒子。先日、上野精養軒で昇進披露宴が行われ、約150人が門出を祝った。

今年1月に師匠の古今亭志ん駒が亡くなり、志ん橋門下に移った駒治は「鉄道が大好きで、鉄道の新作落語をやっています。こんなことで笑えるんだという落語をやっていきたい」。志ん橋は「前座の頃は『大丈夫か』と心配したけれど、二つ目で新作を始めてから、感心している。古今亭で新作をやるのは初めてだと思う」。ロック歌手忌野清志郎さんのファンで、入門は34歳と遅かった小平太は「古典一本でやらせてもらっています。1人でワーッとなる噺は褒めて頂くことが多いです」。さん喬は「若い頃にロックをやっていて、落語の中で大切なリズム感がある。楽しく聴かせる噺家になってほしい」。

勧之助は昇進が決まった時、師匠花緑から「(名前に)花も緑も付けなくてもいい」と言われ、「破門かと思った」という。結局、花緑の「か」、大師匠の5代目小さんの「ん」から「かん」にちなんで改名した。「5人の中で、若さ、華やかさが1番。多くの人に落語を勧められるようになりたい」。花緑は「弟子は11人いるけれど、彼は弟子をまとめる役をやっている。面倒見の良さが芸に反映すれば」と期待した。

大阪出身のたこ蔵は「元気で明るい落語をやっていきたい。江戸落語と関西の落語の二刀流でやりたい」。正蔵は「入門してきた時、ぐにゃぐにゃして気持ちが悪かったので、たこ平と名付けた。最近は面白みが出てきたし、これからは伸びると期待している」。女性落語家の弟子として初の女性真打ちとなる駒子は、中国、台湾、タイで日本人向けに公演を行っている。「移動距離は自慢できる。師匠のもとでなければ、今日は迎えられなかった。駒子ならではと言われる落語をやっていきたい」。菊千代は「強情な弟子で、大変なこともあった。個性を持って、人情味のある噺家になってほしい」と激励した。

披露宴で、来賓の落語芸術協会会長代行の三遊亭小遊三は「荒波に飛び込んで、これからが腕の見せ所」と話せば、市馬会長は「好きで入った道だから、理想の芸に近づけるように頑張ってほしい」とエールを送った。昇進披露興行は、上野・鈴本演芸場の9月下席からスタートし、50日間の長丁場となるが、ようやく真打ちになった5人も、これからがまさに正念場となる。【林尚之】