毎年恒例となった雑誌「ミュージカル」の2018年「ミュージカル・ベストテン」が最新号(3・4月号)で発表された。

ミュージカルをよく観劇している演劇評論家、演劇ジャーナリストら23人が、同誌のアンケートに答えた結果を集計したもので、私も参加している。

2018年に初演された作品のベストテンは、1位には2位を大きく引き離した「メリー・ポピンズ」が入った。2位は三谷幸喜作・演出の「日本の歴史」。3位は堂本光一と井上芳雄が初共演した「ナイツ・テイル~騎士物語」、4位には黒沢明監督の名作をミュージカル化した宮本亜門演出「生きる」と話題作が続いた。以下は<5>ブロードウェイと銃弾<6>マリー・アントワネット<7>オン・ユア・フィート<8>ポーの一族<9>FUN HOME<10>ドクトル・ジバゴの順となる。ちなみに「ポーの一族」「ジバゴ」は宝塚歌劇団の作品で、「オン・ユア」「FUN」は前者が朝夏まさと、後者が瀬名じゅんと、宝塚出身者が主演している。

再演のベストテンは1位が「ジャージー・ボーイズ」、2位が大竹しのぶの「ピアフ」、3位は「モーツァルト!」と続き、以下は<4>1789<5>スリル・ミー<6>メタルマクベス<7>エリザベート<8>ジキル&ハイド<9>ミュージカル李香蘭<10>キャッツとなっている。

俳優・女優のベストテンは票差が拮抗(きっこう)している。俳優では1位に中川晃教が輝き、2位はわずか1票差の井上芳雄。以下は<3>市村正親<4>石丸幹二<5>城田優<6>浦井健治<7>川平慈英<7>堂本光一<7>山崎育三郎<10>大貫勇輔。

女優の1位は浜田めぐみで、2位には4票差でソニンが続いている。以下、<3>大竹しのぶ<4>朝夏まなと<5>花總まり<6>シルビア・グラブ<7>轟悠<8>平原綾香<9>明日海りお<10>早霧せいな。

ちなみに、私が投票した初演ベスト5は<1>メリー・ポピンズ<2>日本の歴史<3>マリー・アントワネット<4>生きる<5>TOP HATの順。再演は<1>キャッツ<2>ピアフ<3>ミュージカル李香蘭<4>ジャージー・ボーイズ<5>ラ・カージュ・オ・フォール。

「メリー・ポピンズ」は04年にロンドンで初演された作品だが、これまで日本で上演されなかったのが不思議なくらい、よくできた作品で、見ていて楽しかった。「キャッツ」も今月12日で上演回数1万回を達成するが、新演出でまた新しい「キャッツ」となっていた。新演出には賛否もあるようだが、来年早々にはミュージカル映画版も公開予定で、「キャッツ」から目が離せない。

俳優は<1>中川晃教<2>井上芳雄<3>市村正親。女優は<1>大竹しのぶ<2>ソニン<3>浜田めぐみとしました。「ピアフ」の大竹はもう別格でしょう。中川は再演の「ジャージー・ボーイズ」のハイトーンの歌いっぷりで魅了されただけでなく、「サムシング・ロッテン」でのコメディー演技に、彼の新しい一面を見た思いがした。

【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)