中止となっていた舞台公演も7月から徐々に再開していきそうです。6月20日に初日予定だった三谷幸喜作・演出「大地」は7月1日に幕を開けることが決まり、こまつ座「人間合格」も6日に初日を迎えます。鈴木杏が一人芝居に初挑戦する「殺意 ストリップショウ」は11日に幕を開け、劇団四季もミュージカル「ライオンキング」「マンマ・ミーア」が14日から、「アラジン」「キャッツ」が15日から再開します。

ただ、再開に際し、難問が控えています。というのも、新型コロナウイルス感染防止のガイドラインによると、客席は前後左右を空ける必要があるため、客席数は半分以下になってしまいます。上演するパルコ劇場の定員は636席の「大地」は、公演期間の変更や座席見直しなどのため、完売していたチケットを払い戻し、再びチケットを販売しますが、販売されるチケットは最大で半分の318席となります。それは劇団四季など他の公演も同様で、半分になった客席がいっぱいになったとしても、ほとんどの公演は赤字となってしまいます。

そこで、浮かぶのは、チケット料金の値上げですが、それもいろいろと問題があります。7月8日初日の舞台「剣が君」では、当初のチケット料金から5000円を値上げして上演することを決めました。客席が半分となるため、大きな赤字を避けるための窮余の策でしたが、そこに出演者の1人が異議を唱えました。自身のツイッターに「今回運営が出した対応に役者として賛同し、芝居をすることができませんでした」と書き込み、降板したことを明らかにしたのです。

「大地」の場合は、チケット料金は1万2000円と、以前と変更はないのですが、上演中の公演としては異例のライブ配信を決めました。7月12日から8月2日までの計10回の公演についてライブ配信することにしたもので、視聴料金は3000円です。公演終了後にテレビ放送されたり、DVDとして販売されたりしますが、今回のような上演中のライブ配信は異例なことです。

公演中止が続く中で、無観客のオンライン演劇が配信され、先日の本多劇場でオンライン配信された一人芝居は料金2500円で、約6000人が視聴しました。生の舞台を見るのは演劇鑑賞の醍醐味(だいごみ)ですが、「大地」のほかにも、7月1日初日の舞台「ディファイルド」では、劇場で撮影されたVR映像を配信プラットホームで鑑賞できるシステムを採用しています。これからはオンライン配信の視聴が新たな「観劇」スタイルになるのかもしれません。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)