2020年の年末は活動を休止する「嵐」一色でした。それぞれ活動を続けるので、ドラマやニュース番組、バラエティー番組などで彼らの姿を見ることができるのでしょうが、私にはちょっと期待していることがあります。それは、彼らが舞台に出演することです。

最近こそ舞台出演はないけれど、20代の時、嵐の5人は舞台によく出ていました。松本は蜷川幸雄演出で野田秀樹作「白夜の女騎士」、寺山修司作「あゝ、荒野」やジェームス・ディーンの主演映画の舞台版「エデンの東」、二宮は蜷川演出で岩松了作「シブヤから遠く離れて」、ディーンの主演映画の舞台版「理由なき反抗」、櫻井はミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」、アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲の「ビューティーフル・ゲーム」、相葉は「燕のいる駅」、天才庭師を演じた「グリーンフィンガーズ」、大野はサム・シェパード作「トル-・ウエスト」「ウエスト・サイド・ストーリー」など名作、話題作に出演していました。ここ10年ほど舞台から遠ざかっているけれど、個々の仕事の上に、嵐としての冠番組を抱えるなど多忙の中、稽古で1カ月、本番で1カ月と計2カ月も舞台に集中する時間が取れないことも影響していたのでしょう。今年からは、嵐としての活動が休止する分、スケジュール的にも舞台出演のハードルが低くなっていくはずです。

蜷川さんは舞台俳優としての藤原竜也、V6森田剛、小栗旬らを育てたけれど、一緒に舞台を作り上げたことのある松本や二宮を高く評価していました。アイドルを起用することに批判を受けた蜷川さんは「偏見でしかないね。アイドルとやるのは、彼らが本当に努力しているから。生半可な俳優より舞台を見ているし、稽古場にも来る。あれだけ人気でも、満足しないで、もっとできると考えている。見えないところで努力しているんだ」と、事あるごとに反論していました。

蜷川さんの言葉は、お世辞でもなく、真実のものだったと思います。それは自分の体験からも言えます。蜷川さんは「会社の看板、肩書では人を見ない」と言って、取材にも分け隔てなく公平に応じてくれた数少ない1人でした。そんな蜷川さんに罵声を浴びながら厳しくも愛ある指導を受けた二宮、松本はもちろん、櫻井、相葉にも舞台に戻ってきてほしいと思います。コンサートの演出をする松本なら、将来的に舞台演出にチャレンジしてほしいし、二宮には野田秀樹とのタッグもいいかもしれない。それらが実現することが2021年以降の楽しみの1つでもあります。【林尚之】

野田秀樹には二宮とのタッグ期待(2013年撮影)
野田秀樹には二宮とのタッグ期待(2013年撮影)