歌舞伎俳優の中村歌六(72)が人間国宝に内定しました。老け役から敵役まで幅広い役柄を演じ、口跡の良さでも定評のある名脇役ですから、今回の内定にもあまり驚きはありませんでした。当然の結果だと思います。

19日、人間国宝認定の答申を受け会見を行った中村歌六
19日、人間国宝認定の答申を受け会見を行った中村歌六

播磨屋一門として、一昨年に亡くなった中村吉右衛門さんとの共演が多かったのですが、かつては3代目市川猿之助(現猿翁)の一座で活躍しました。1986年に初演されたスーパー歌舞伎の第一弾「ヤマトタケル」ではタケヒコ役を演じていました。昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の北条時政役で脚光を浴びた坂東彌十郎も熊襲兄タケル役で出演経験があります。当時の3代目は、役に恵まれない「澤瀉屋」以外の若手を積極的に起用していました。歌六も彌十郎も猿之助一座では重要な役割を担いましたが、その時の経験が今に生きているように思います。

心中事件で再逮捕された4代目の市川猿之助容疑者(47)も3代目同様に、「澤瀉屋」以外の若手を抜てきしていました。主演・演出したスーパー歌舞伎2「ワンピース」の若手主体の特別公演で主役ルフィに尾上右近(31)が起用され、猿之助容疑者の負傷降板後は右近が全公演で主演しました。中村隼人(29)もスーパー歌舞伎「オグリ」や「ヤマトタケル」で猿之助容疑者と交互主演を経験しています。

尾上右近(左)と中村隼人
尾上右近(左)と中村隼人

そして、右近は新橋演舞場で上演中の新作歌舞伎「刀剣乱舞」で小狐丸と足利義輝の2役をはつらつと演じ、隼人も8月の歌舞伎座第三部「新・水滸伝」で主演の林冲役を予定しています。右近も隼人も、10年後、20年後の歌舞伎界でより大きな存在になっているでしょうが、その時、猿之助容疑者はどうしているのだろうか。そんな思いが頭をよぎります。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)