8月の歌舞伎座といえば、松本幸四郎(50)と市川猿之助被告(47)との「弥次喜多」シリーズが人気だった。
2016年に始まり、17年、18年、19年、そして22年と5回も上演された。猿之助被告が脚本・演出も担当し、宙乗りに本水の大滝の中での立ち回りなどで観客を喜ばせた。特に昨年は市川染五郎と市川團子の10代コンビの活躍が顕著だった。
今年は「弥次喜多」上演の予定はなかったけれど、猿之助被告が林冲役で主演する予定だった「新・水滸伝」で2人の共演は実現するはずだった。しかし、事件のために降板し、代わって若手の中村隼人が林冲役を演じた。終盤、兄貴分の魯智深役の幸四郎が登場し、林冲をいたわり励ます場面では、幸四郎の存在感の大きさが際立っていた。これからの歌舞伎界をけん引するべき両輪の片方が脱輪してしまった今、幸四郎という存在の重さが増している。
「新・水滸伝」では、市川中車(香川照之、57)が梁山泊(りょうざんぱく)の頭領の晁蓋役で出演しているが、これがなかなか良かった。若手が多い中で、場の空気を落ち着かせる、頭領としての重厚感があった。
そんな舞台を見た直後に、中車が昨年、20代後半の女性と再婚し、男児が生まれていたというニュースが流れた。さらには将来の襲名についての予測報道もあった。長男の團子が5代目として「猿之助」を襲名するという既定路線に揺るぎはなく、次男となる男児は「段四郎」を襲名するというものだった。中には中車がまず5代目として「段四郎」を襲名し、次男は成人した後に「段四郎」を襲名するという予測記事もあった。中車の「段四郎」襲名は別として、次男の襲名は本人が歌舞伎俳優になるかどうかで変わってくるだろう。そして、次男が成人する時、中車は75歳。長生きして、歌舞伎界で活躍し続けることが、次男の襲名に大きな後押しとなるのだろう。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




