5日に発売された雑誌「ミュージカル」最新号(3・4月号)で昨年23年に上演されたミュージカルのベスト10が発表されました。演劇評論家、演劇記者ら21人の投票によるもので、私も参加しました。

初演のベスト10は1位が「ラグタイム」で、以下<2>ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル<3>ドリームガールズ<4>スクールオブロック<5>太平洋序曲<6>ベートーヴェン<7>ザ・ビューティフル・ゲーム<8>バンズ・ヴィジット<9>チャーリーとチョコレート工場<10>マチルダ。

男優部門のベスト5は<1>井上芳雄<2>松本白鸚<3>柿澤勇人<4>石丸幹二<5>海宝直人。女優部門が<1>望海風斗<2>濱田めぐみ<3>礼真琴<4>真彩希帆<5>安蘭けい。再演のベスト5は<1>ラ・マンチャの男<2>ウイキッド<3>アナスタシア<4>シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ<5>クレイジー・フォー・ユーでした。

私も初演ベスト10で1位は「ラグタイム」2位は「ドリームガールズ」3位は「ムーラン・ルージュ!」に投票しました。「ラグタイム」は20世紀初めの米国を舞台に、上流階級の白人女性(安蘭けい)、ユダヤ人移民(石丸幹二)、黒人ミュージシャン(井上芳雄)の3人を中心に、人種差別や文化的な対立と融和を描いたスケールの大きい舞台でした。そんな舞台の中心にいた安蘭、石丸、井上が男優・女優部門で上位にランクインしたのも当然でしょう。

ミュージカルというより音楽劇として面白かったのが「浅草キッド」でした。初演ベスト10では7位で投票しましたが、林遣都演じるビートたけしの師匠役の山本耕史がよかった。浅草に生きた最後の芸人の姿を格好よく、哀愁も帯びて演じていたのが印象的でした。

女優部門では望海が飛びぬけていました。「ムーラン・ルージュ!」「ドリームガールズ」でヒロインを演じ、圧倒的な歌唱力でした。2位とは倍以上の点数差がありました。

そして、男優部門では私的には文句なく松本白鸚が1位でした。市川染五郎時代の「ラ・マンチャの男」を初めて見てから45年。体力的にも万全ではないだろう中、気力で歌い、演じきりました。劇中の「あるべき姿のために闘う」というせりふを体現したかのような奇跡の舞台でした。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)