主人公マーロを演じるシャーリーズ・セロンの肉体改造がすごい。育児に疲れ果てた母親を熱演するために体重を18キロも増量し、Tシャツからはみ出る下腹はたぷたぷ。美貌を封印してほぼノーメークのシーンもある。

 小学生の子ども2人がいるマーロに3人目が生まれる。それまで仕事と家事・育児を完璧にこなしてきたが、1人増えたことでいっぱいいっぱいになり、心身ともに追い込まれていく。完璧な母親像を求め続けるマーロの元に、ある夜、タリーと名乗る若いベビーシッターが現れる。自由奔放だが仕事は完璧にこなすタリーは「私を頼って」とマーロにほほえみかける。

 育児がテーマの映画だが、男性監督ジェイソン・ライトマンの視点も反映されている。完璧な「母親」を「父親」、「長男」、「リーダー」などに置き換えることもできる。その立場で人は理想の自分像を求めて「もっとがんばらなければ…」。でも、完璧にいくことは少ない。そんな自分を許せず、がんばり続けてしまう。でも、心が折れそうなときは、人に助けてもらってもいい。がんばらないくてもいい。そう語りかけてくれる作品である。【相原斎】

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