覚悟して見たほうがいい。人間の見たくないところ、痛いところをえぐり、かきむしる。金欲、性欲…、むき出しの感情のぶつかり合いが人間の残酷さ、愚かさをあぶりだしていく。

嫁不足の山村で農家を営む高齢の父母と暮らす42歳独身の宍戸岩男(安田顕)はパチンコ店のアルバイト店員。恋愛をしたことはなく、女性経験もない。

職場の女性にふられ、やけになった岩男はコツコツためた300万円をはたき、国際結婚あっせん会社のツアーでフィリピンへ行き、そこで出会ったアイリーン(ナッツ・シトイ)と結婚。彼女を連れて帰国するが、母ツル(木野花)は激怒、アイリーンに猟銃を突き付ける。息子を溺愛する母が絡み、壮絶な愛のドラマが展開する。

ツルがアイリーンにつばを吐きかけ怒鳴り合うシーン、岩男が欲望を抑え切れずに絶叫するシーンは生々しい。ダメ男の卑屈さ、ある事件が起こった後のすごみを安田が巧みに演じ分けている。「愛したい、愛されたい」。全員が不器用で、それぞれの思いは一方通行だ。本当に手を握りたい人とは違う人の手を握ってしまう。切なくて、いとおしくて、泣ける。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)