コロナ禍を乗り越え、完成した作品だ。「映画の神様」を信じ続けた主人公ゴウと、その家族に起きる奇跡を描いた物語で、原田マハ氏の同名小説が原作。映画監督になる夢を追った若きゴウを菅田将暉が演じ、晩年のギャンブル好きで借金まみれのダメおやじを志村けんさんが演じるはずだった。撮影の折り返し地点直前の昨年3月29日、志村さんは新型コロナウイルスによる肺炎で急逝した。
「彼が突然、亡くなって、本当にどうしようかと思いました」。通算89作目となる山田洋次監督は悲しみと喪失感に動揺した当時の胸の内を振り返る。志村さんが亡くなり、ほどなくして緊急事態宣言が発令され、撮影は長期中断を余儀なくされた。
山田監督は脚本を書き換え、志村さんと親交のあった沢田研二が代役を引き受けた。やや志村さんに寄せ過ぎのところもあるが、故人の思いをまといながらの演技に胸が締め付けられた。北川景子の昭和のスター役がハマっている。菅田の好演も光る。劇中、「東村山音頭」を歌う場面は製作や出演者の志村さんへの強い思いを感じた。映画を愛する人々の思いがぎゅっと詰まっている。【松浦隆司】
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