脚本家の古沢良太さんは4年前のドラマスタートに際して、「ジメッとしちゃうので、詐欺師の主人公たちの生い立ちや背景はもういいんじゃないかと思った」と語っていた。

映画化3本目の今作では、ダー子(長澤まさみ)ボクちゃん(東出昌大)リチャード(小日向文世)が師と仰いだ伝説の詐欺師の登場で、3人を結び付けた過去が初めて物語に絡むところがミソになっている。

映画ならではの豪華な舞台は、セレブが集う世界遺産の街マルタ島ヴァレッタ。オサカナ(カモ)となる元マフィアが所有する古代ギリシャ彫刻を巡る頭脳戦は、今回も先を読ませない。本当の敵役は誰なのか。ダー子が張り巡らせた仕掛けはどこまでなのか。

このシリーズには推理を巡らせては裏をかかれる。だまされることがいつの間にか快感になる。ダー子キャラをすっかりものにした長澤のはじけっぷりはますます手だれてきて、人情ドラマの趣がある過去が絡んでも少しもジメッとしない。

脇役陣にもおなじみの面々が登場。毎回ひどい目に遭ってきたゴッドファーザーこと赤星(江口洋介)がひと味違う存在感を示し、どんでん返しに一役買う。【相原斉】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)