スクリーンを突き破りそうな勢いで、ゴジラが牙をむく。あまりの顔の大きさに、怖いやら何やら、そんな感情も吹き飛んでしまった。冒頭から逃げ惑う兵士を頭から丸かじりにしては、首を振って吐き出すなど大暴れするゴジラの姿を、ただ、ただ見つめるばかり…。その中、青木崇高が演じた海軍航空隊の整備士の、恐怖にゆがんだ顔が大きく映し出され、恐怖という感情が湧き出してきた。

ゴジラ生誕70周年記念映画と銘打ち、1954年(昭29)11月3日公開の「ゴジラ」(本多猪四郎監督)と同じ11月3日に封切られるまで、情報はほぼ開示されなかった。一般の観客が見ることが出来た機会は、1日の東京映画祭でのクロージング上映だけだった。その中でも、山崎貴監督や主演の神木隆之介らは、作品が体験型であることは繰り返し、発信してきた。

公開した今だから、書いてもいいだろう。濃厚な人間ドラマと愛の物語が、もう1つの大きく、太い軸だ。神木演じる戦争から生き残った元海軍航空隊員の敷島と、荒廃した東京で出会った見ず知らずの敷島の元に身を寄せた、浜辺演じる大石典子の2人の関係が、いじらしく、美しい。そんな2人が、戦後になっても取り戻せないほど深く負った戦争による傷と、そこから再生していく姿を描いた物語は、各国で紛争が起き、世界的に緊張感が高まる今、人々の心に何かを届けるのではないか?【村上幸将】

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