高級クラブが軒を連ねる大阪・北新地(大阪市北区)をテーマにした「北新地のうた」が誕生しました。「大阪で生まれた女」など北新地から火が付きヒットした歌は数多くありますが、北新地そのものをテーマにした楽曲は初めて。北新地を歌で盛り上げようと、約430店でつくる北新地社交料飲協会が2年前から企画。大阪では「新地」の愛称で呼ばれる“ご当地ソング”を歌うのは現役のホステスユニットです。

 ♪新地の女を なめんといて 気まぐれに 恋してる わけやない

 17日夜、大阪市内のホテルの宴会場。北新地で働くホステス4人が緊張気味にマイクを握りました。なじみ客ら約1000人を前に新曲「新地の女をなめんといて」を初お披露目し、歌手デビューしました。4人は北新地のホステスら40人からオーディションで選ばれたユニット「新地物語」。着物姿でステージに立ったクラブ山名の悠子さんは北新地歴8年。「大事に大事に歌わせていただきました」。歌詞に込められた想いをかみしめながらの晴れ舞台でした。

 北新地歴5年の倶楽部うえだの美歩さんは「すいもあまいもかみ分けた大人の女性の歌ですね。私はまだまだです」。ダンサブルな曲に合わせて妖艶な振り付けを披露しました。

 「新地物語」をプロデュースし、「新地の女-」を作詞・作曲したのは「喝采」、「北酒場」のヒット曲で知られる中村泰士氏(78)です。お客としての北新地歴は40年以上。2年前に北新地社交料飲協会の東司丘(としおか)興一理事長(66)から「北新地を代表する曲を作ってほしい」との依頼を受けました。

 「北新地歴は長いですからね。すぐに作詞作曲はできました。歌詞には新地の女性たちの想いを込めました。作詞作曲? 無料ですよ。もし歌を気にいってくれた店に飲みに行ったらタダにしてくれるでしょ(笑い)」

 ♪惚れるなら思いきり男をして

 ♪マジ顔で口説いてよ私一途

 東司丘理事長は「男と女の大事な気持ちのやりとりが表現されています。ほんと、いい曲です」と満足そう。

 これまで北新地から広まったヒット曲もあります。

 ♪大阪で生まれた 女やさかい~

 大阪を代表する曲「大阪で生まれた女」は、シンガー・ソングライターのBOROが北新地で弾き語りをしていたときに歌っていた曲でした。BOROが「大阪-」を歌うと、客やホステス、バーテンは、涙を流しながら聞いたといいます。1979年(昭54)、「大阪で生まれた女」がレコード発売されると、全国的に爆発なヒットを記録しました。

 「北新地の女-」は2000枚のCDが制作され、同協会の加盟店に配布されます。一般には非売品ですが、カラオケでの全国配信はスタートしています。

 クラブ山名の悠子さんは言います。「歌詞の『なめんといて』はケンカのときの言葉ではなく、もっと深い意味がありそうです」。新地で働く女性の誇りでしょうか。これから新地で歌い継がれる名曲になるかもしれません。

 ちなみに歌詞にある「マジ顔で口説いてよ」、そんなシチュエーションになったことはありますか? アホな質問に悠子さんは「うふふふっ」。それって?

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)