昨夏に肺腺がんステージ4を公表し、闘病しつつも創作活動を続け、レコーディングにも参加、昨年末にはライブ復帰も果たしていた人気ヒップホップグループ「ET-KING」のリーダー、いときんさん(享年38)が亡くなり、大阪市内で、行われた通夜、葬式には大勢のファンが集まった。

 その“ファン”の1人であり、“友人”でもある漫才師、ぼんちおさむさん(65)も通夜に姿を見せており、声をかけた。

 みるみる目が赤く染まり「ええ男や。おとこ気あふれるね…」。おさむさんは泣いていた。親交が長いわけではなかった。昨年1月、毎年恒例、おさむさんの自宅での新年会に、いときんさんは出席していた。

 「その1年ぐらい前からかな。知り合ってな。ワイワイ言うて、セッションしてな…。ほんまな、また、やりたかった」

 長さは関係ないようだった。舞台では「おさむちゃんでーすっ」と弾けた芸風をいまだ貫くが、普段は格好もオシャレで、粋を好むおさむさん。趣味でジャズの魅力にはまり、自らも音楽活動をしている。

 ストレートに歌にメッセージをのせるいときんさんのスタイルは、音楽仲間としても魅力的だったようだ。「セッションな、セッション、またしよう言うてな。約束したんや」。

 昨年11月、おさむさんは、いときんさんがリーダーを務めていた別のグループ「OSAKA ROOTS」のライブに飛び込み出演していた。

 そこで、メンバーから、いときんさんが「またセッションしたい」と言っていた話を聞いたという。その頃、自宅療養中だったいときんさんは、大阪市内のスタジオでアルバムのレコーディングに参加したり、楽曲制作も行っていた。

 「年末にはライブにも出たいうて、聞いてたし、大丈夫やと信じてた」と、おさむさんは言った。

 切なそうに絞り出す言葉に悔しさがにじんだ。海千山千の漫才師、芸能界の大先輩を、知り合った瞬間に魅了してしまういときんさんの魅力って、何だったんだろうか-。おさむさんの顔を見ながら考えていた。

 そして以前、ET-KINGのメンバーが言っていた言葉を思い出した。「誰にも、何にも、真正面から向き合う人」と口をそろえていた。裏表のない直球勝負か-。答えを探しながら、通夜、葬儀と、いときんさんを見送った。【村上久美子】