予期せぬ出来事に見舞われたとき、慌てふためく人もいますが、この人は「不死身のロックンローラー」でした。不死身を支えたのは、積み重ねた「ロック魂」でした。
先日、ロックバンド「HOUND DOG」のボーカル大友康平(68)の大阪市内で取材会がありました。HOUND DOGの珠玉の楽曲をアコースティック調にリアレンジしたライブ「僕の歌は、君の歌~K‘s Selection 2024~」の取材会でした。
昨年11月に行った定期健診で腎臓に腫瘍が見つかりました。初期の腎臓がんでした。
「健康には人一倍、気を使ってきたんだけど、予期せぬ出来事だった。日本人の2人に1人はガンになる時代だから、運命として受け入れ、治療した」
2月に腫瘍の摘出手術を行いました。3月から予定していた恒例の年1回のコンサートを目指し、「最初は1カ月ぐらいで復帰しようと思った」そうですが、医師から「それは絶対にやめてほしい。2カ月間は静養の時間をつくってください」と“ドクターストップ”がかかりました。
退院後は、どっしりと腰を落ち着けて、静養に努めました。体力づくりや発声練習に取り組み、驚異的な回復力で5月から中止していたライブツアーの振り替え公演を開催し、ステージで「アイアム、ジャスト、不死身のロックンローラー!」と復活宣言してみせました。
大病を乗り越えて、心境の変化はあったのでしょうか。
「若いころは年間150とか170本のライブをずっとやってきた。1年で9カ月か、10カ月は旅に出て、残り2カ月はレコーディング。音楽漬けの五十数年間だった」
全国津々浦々をツアーし、力強いライブでファンを増やました。メッセージソング「ff(フォルティシモ)」が大ヒットし、武道館15デイズ、日本人初の東京ドーム単独公演など「伝説」を作りました。
「いろんな出来事もあり、ちょっとまあ、俳優をやってみたり、バラエティーに出演してみたり。いろいろなものに手を出すことができた。それはそれで調子モンの自分には、幸せだなと思う」
大病での“休息”は、これまでの歩みを振り返るきっかけにもなりました。なによりも「ロック魂」を再確認しました。
「年間150日にしろ、200日にしろ、1から始まる。1本、1本があり、例えば200本ツアーをやっても、なんとか県、○○市、アーティストがこないようなところでもライブをやってきた」
ライブのときにいつも心の刻んできたことがありました。
「その人たちにとっては一期一会なんだな。もちろん手を抜くことはできないし、抜いたこともない。1本1本が初日で千秋楽」
大病の前によく使っていた言葉は「生かされている命」。闘病中、心の底から思ったことがあるといいます。
「自分は生かされているんだなということを実感した」
昨年も開催した「僕の歌は-」は、今年は9月に東京、神戸で、それぞれ3デイズの開催となります。昨年は2デイズでしたが、今年は「3連チャン」に挑戦します。
「70歳を前にして、チャレンジと言えば大げさだけど、“3連チャン”できることがありがたい」
来年はメジャーデビュー45周年を迎えます。数十年にわたって、ファンとともに積み重ねてきた「ロック魂」。いま改めて思うことがあります。
「魂を込めた曲を1つ、1つ丁寧に表現していきたい」
不死身のロックンローラーが、心に染みるバラードを「今こそ歌うよ」-。
【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




