宙組スター真風涼帆(まかぜ・すずほ)が、外部劇場2度目の主演作に臨む。バンパイアが人間と恋をする喜劇調の人間ドラマ、ミュージカル・プレイ「ヴァンパイア・サクセション」。組替えを経て、特長を生かした「骨太な男役」を確立したが、今回はコミカルな別の顔も見せる。大阪・シアター・ドラマシティで11日まで、KAAT神奈川芸術劇場で17~23日。

 長身、はっきりした目鼻立ち。星組から宙組へ移って1年。“男らしさ”に磨きがかかってきた。「新しい場所で、新しい役と出会うきっかけになった。組替えはよかった」。一人前の指標「男役10年」が過ぎた昨年、組替え。それまで、前トップ柚希礼音が率いた星組を支えてきた。

 「転校もしたことがなく(組替えは)初体験でしたが、意外と大丈夫でした。移ってみると、単純に『すっごく上級生になったな』って(笑い)。化粧前の位置が上がって、お風呂(の順番)も早くなって」

 異動直後の本拠地作「王家に捧ぐ歌」では、反骨心あふれるヒロイン・アイーダの兄を好演。骨太な男役として持ち味を発揮した。

 「星組にいた時、自分の個性、カラーに、たくさん悩んだ。もがいて苦しんだ分、今は、やりたい方向性と役柄がうまくあって、パワーが多く出ているのかも。なにせ、もう星組の上級生はすごかったので!」

 在位6年を超えた柚希時代の星組では、貴公子然とした存在感を誇る紅ゆずるら個性豊かな先輩に囲まれていた。一昨年の100周年第1作「眠らない男 ナポレオン」で、仏軍人を演じ「骨太な男らしい男役が楽しかった」と振り返る。野性味あふれる男こそ、自らの方向性だと気付いた。

 宙組では、トップ朝夏まなとをサポートする2番手ポジションへ。必然的に敵役、ダークな役も増えた。そして今回、2回目の外部主演作がめぐってきた。

 「(身内の)バウ(ホール)主演とは違いますが、初めてのドラマシティ主演より、気負わずにやれるかなとは、感じています」

 臨む役は現代ニューヨークによみがえったバンパイア。人間の少女と恋に落ち、不死のバンパイアが命の尊さを知る。コメディータッチ。今作は骨太な男とはまた違った顔を見せる。

 「十字架、にんにくは苦手でも、死ぬほどではなくて、環境に適応したバンパイア」と笑う。偶然、以前に見ていた国内外の映画が役作りの参考になった。

 ジョニー・デップ主演の米映画「ダーク・シャドウ」(12年)と、人間とバンパイアの禁断の恋を描いた米映画「トワイライト~初恋~」(08年)、昨年公開の邦画「恋するヴァンパイア」などの作品だ。

 「たまたまこういう作品が好きで、よく見ていて。最初、作品を聞いて、中世のイメージかと思ったけど、よく聞くと、あ~、こっちの世界観かと(笑い)」

 過去の記憶も役作りに投影。「ジョニー・デップさんの個性的なところ、学園物のラブコメっぽい雰囲気、友情とか」と話す。

 一方で命を考え、問う場面もあり、実家で飼っていた愛犬との別れへ思いをはせる。「中2の時から飼っていて、去年亡くなった。ひとつの命が失われ、感じるところはありました」。役柄に等身大の思いものせ、男役として、新たな扉を開ける。【村上久美子】

 ◆ミュージカル・プレイ「ヴァンパイア・サクセション」(作・演出=石田昌也氏) 現代のニューヨークによみがえったバンパイア・アルカードは、700年の月日が流れたことで生き血を求めて人を襲うことも、十字架を恐れることもなくなっていた。その彼が、不幸な過去を持つ女子大生ルーシー(星風まどか)と出会い、限りある人の命の尊さを知り「人間」になろうとする物語。

 ☆真風涼帆(まかぜ・すずほ)7月18日、熊本県生まれ。06年初舞台。星組配属。3年目の09年「マイ・ディア・ニューオリンズ」で新人公演初主演。長身を生かしたりりしい立ち姿で頭角を現し、11年8月「ランスロット」でバウホール初主演。13年10月「日のあたる方(ほう)へ-私という名の他者-」で、ドラマシティなど外部初主演。昨年5月に宙組へ。身長175センチ。愛称「ゆりか」。