配信系サービスのランキングを見ているとアニメ作品が思いのほか多い。会社員が1日疲れて帰宅したときに行間を読む2時間の映画ではなく、1話30分(実際には23分ぐらい)のアニメ作品を選択する気はわかる。

またお子さんのいる家庭では一緒に楽しめて、親子の会話の懸け橋にもなっているとも思う。実際、めいっ子に空前のヒットとなった「鬼滅の刃」のグッズをおねだりされ、送りもした(amazon便利すぎる…)。さらに子供向けの単純なストーリーではなく、大人も十分に楽しめる内容のものが多く、日本はアニメに関しては世界トップクラスと断言してもよい。

配信の話に戻るが、「鬼滅の刃」はTOKYO MXで2019年9月に実は地上波で放送されていた。話題になったのはリアルタイムでの放送期間ではなく、コロナ禍の中、配信での視聴であったといえる。普段アニメを見ない層と、配信の相性がよかったのではと分析してみる。

そして、「鬼滅の刃」に続いたのは「呪術廻戦」であり、その後は「東京リベンジャーズ」ではなかろうか。その今最も熱いであろう「東京リベンジャーズ」についても少し解説。物語は、人生どん底のダメフリーターの花垣武道(たけみち)。中学校時代に付き合っていた彼女・橘日向を救うために、12年前にタイムリープして未来を変えるというもの。そこに、彼女の死の直接の原因となった犯罪組織「東京卍會」のトップ、マイキーとドラケンが絡む。

彼女を助けるとともに、自身の人生をどうやり直せるかがテーマになっており、それは男としてどこで覚悟できるかが重要であることがわかる。アラフォー世代には「代紋TAKE2」のヤンキー版と言えば早いのだろうか? また現在と未来を行ったり来たりするあたりはゲーム感覚にも近く、新しいタイムリープものだといってもいいのかもしれない。

その「東京リベンジャーズ」は、アニメ化の次は北村匠海主演による映画化、さらには舞台化まで決まっている。舞台については「鬼滅の刃」同様、最近よく耳にする2・5次元舞台というものだ。そこで主演を演じるのが、今回取り上げる俳優。木津つばさである。

木津つばさ、現在23歳。広島県出身でソニー・ミュージック主催のオーディションに合格し、ダンスボーカルグループXOX(キスハグキス)の最年少メンバーに。同時に男性演劇集団「劇団番町ボーイズ☆」の所属となる。23歳にして数々の舞台を踏み、舞台「刀剣乱舞」、「あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ」など数々の人気舞台に出演。キャリアを見る限り、同年代ではずばぬけている。

何度か仕事をしたことがあり、監督目線で人となりを少し紹介する。最初の出会いはXOX時代に、TOKYO MXのドラマ「メンドル学園2~サバイバル・ウォーズ~」にグループの一員として参加。そこで印象的な出来事が起こる。 クランクアップ後に片づけをしているところに1人でやってきて「普段、映画撮られていますよね?俺めちゃくちゃ出たいんでよろしくお願いします」とわざわざあいさつをしに来てくれた。若い役者ではプライベートも含めてここまではっきりと物おじせずに直談判をしてくれる子は珍しく、撮影が終わった後もずっと印象に残っていた。

その後、昨年秋ごろコラムでも取り上げた俳優の高崎翔太くんと何か配信コンテンツを一緒に作ろうと企画した作品(映画「元メンに呼び出されたら、そこは異次元空間だった」)の中で、彼のことが真っ先に思い浮かび、声をかけ出演してもらった。短い撮影期間であったが、全編を通して躍動感のある演技を披露してくれてとても満足している。

映画は無事に完成し、今年の初めには配信イベントを実施。そしてありがたいことに、今月19日にはリアルの上映イベントが決定。そこで木津つばさ、見た目はもちろん性格も芝居もよい。だから数々の現場に呼ばれるのであろう。そして何より若いのに俳優に対しての覚悟ができている。それはまるで「東京リベンジャーズ」の武道同様、彼もまた2度目の人生かもしれない。タイムリープしてきたのかもしれない俳優、木津つばさ。今後の活躍に期待です。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)生まれ、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画『リュウセイ』の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。今夏には最新作「元メンに呼び出されたら、そこは異次元空間だった」が公開予定。