2022年初コラム、本年もよろしくお願いします。2年連続で帰省することもなく、新作映画(追想ジャーニー)の編集とともに、たまりにたまった映画やドラマ、バラエティー番組をじっくりと堪能させていただきました。

特にドラマチックだったのは、映画やドラマではなく、M-1グランプリを優勝した錦鯉。50歳にしての初チャンピオン、オズワルド優勢と思えた決勝ラウンドでの逆転劇、ドラマ以上のドラマを感じる。

10月のキングオブコントから始まり、THE WにM-1と、芸人さんにとっては夢のある数カ月間。映画業界も12月の報知映画賞に始まり、現在もなお、賞レースが続いているが、こちらはカンヌや東京国際映画祭のようなコンペではなく、公開後の映画がメインとなるので、それほど意外性のないままに終わっていくのが残念。2022年、もっと盛り上がりますように。

芸人と映画。世界の北野をはじめ、カリスマ松本人志と、お笑いの頂点に立つと映画監督にチャレンジする傾向にあるのだろうか。それは内村光良や太田光もしかり。コントの延長といってはあれだが、企画力は半端のない人たちである。 他にも、劇団ひとりやゴリ(ガレッジセール)、品川祐(品川庄司)らは本業と言っても過言ではないほどの活躍をみせている。また、芸人さんがモチーフになる作品もここ近年多くなりつつあり。ジミー大西と明石家さんまとの出会いを描いた「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」(Netflix)をはじめ、各所で話題となっている劇団ひとり監督の「浅草キッド」(Netflix)。さらには昨年末、志村けんさんを中心にドリフターズを描いたスペシャルドラマ「志村けんとドリフの大爆笑物語」(フジテレビ系)が放送された。

海外では「ボヘミアン・ラプソディ」などアーティストがモデルとなっている映画は多々あるが、日本の芸能だとそれが芸人に変わるのかもしれない。その破天荒な生き方は、映画やドラマの題材としてマッチするのではないかと思う。

さて、今回紹介するのは「志村けんとドリフの大爆笑物語」にて、加藤茶を演じた勝地涼(35)。2005年の映画「亡国のイージス」で日本アカデミー賞新人賞を受賞した後、主演というよりもどちらかというと脇にまわり、若くしてバイプレーヤーの位置を確立。大ヒットしたドラマ「あまちゃん」では、前髪クネ男として1度きりの登場にもかかわらず、強烈なインパクトを残した。

コメディーからアクション、シリアスものと、とにかく演技の幅が広く、出演したら必ず結果を残すタイプだと認識。今回のドラマでは、安定感のある芝居で主役の山田裕貴演じる志村けんを絶妙な間合いでサポートする。

そして、物語の合間に当時と同じコントを披露しているが(さすがの福田演出!)、その再現度が高く本人に憑依(ひょうい)しているのではとニュースになるほどであった。キャストが発表された時には菅田将暉のほうがいいんじゃないか?との声も聞かれたが、終わってからは全く聞かなくなった。ぜひ続編も、いや今度は加藤茶視点で、今や良妻で人気の奥さんとのなれ初めなんかも見てみたい。2022年、さらなるブレークに期待です。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。今夏には最新作「元メンに呼び出されたら、そこは異次元空間だった」が公開された。