1日に放送されたフジテレビ「ダウンタウンなう」で、松本人志さんが歌手吉幾三さん(64)について苦笑いでこぼした言葉です。8月の同番組の「本音でハシゴ酒」コーナーに出演した吉幾三さんが「3月で歌手引退」を宣言してネットニュースを賑わせましたが、その後、所属事務所が「アルコールが入った上での発言で、歌手活動は休止いたしません」とあっさり白紙に。とほほな松本さんが「それ言われたらこの番組成立しない」と半笑いで語りました。

 吉さんは「○周年」の節目になるとあちこちのインタビューで引退宣言をする常習犯でもあります。でも、まさかテレビで、それもダウンタウンの番組で「45周年で人生終えようと思って。歌をね、歌うことを」「来年の3月まで歌って、ちょっと休ませてもらいます」と絶好調に引退表明するとは思わなかったので驚きました。実際、吉さんはかなりの泥酔状態でしたが、“スクープ発言”に「えーっ」「辞めるんですか」と驚いていた松本さんや坂上忍さんの気持ちを考えると、放送自体が何だったんだという話で、脱力も分かります。

 弊紙の記事をさかのぼると、「吉幾三」「引退」でヒットした最も古い記事は89年。なんと吉さんが37歳の時です。NHK紅白歌合戦の音合わせが行われたスタジオのロビーで「来年の抱負」を聞かれ、歌手引退の意志を語っています。厳しい表情で「青森にいる家族のためにも、来年秋からの仕事を入れていない。作詞作曲はするかもしれませんが、歌はもうやりません」。大きな頭記事で、見出しは「吉幾三歌手引退へ」となっています。

 翌90年には「引退撤回」のインタビュー記事があり、その翌年の91年には「作詞作曲に専念したいので3カ月の休養を表明」と、めまぐるしい展開です。97年には別のスポーツ紙に「30周年で歌手引退」を大々的に宣言して撤回するなど、もはやネタというか、どんどん風物詩化しておもしろい方向性へ。ちなみに、直近の13年の本紙のインタビューでは「65歳までに歌手引退」「来年あたりからアメリカに住み、永住になると思う」と語っています。

 37歳の時から、歌手を辞めて作詞作曲に専念したい、海外で勉強したいという本音にうそはないのでしょう。しかし、経営する複数の会社などのことを考えるといろいろ現実味がなく、確信犯的に引退宣言をしては撤回するという流れになっているのだと思います。

 特に今回はあれだけ酔っていたので、引退宣言以外もかなりの暴走でした。トーク後、松本さんが「意外と一夜明けたら全然辞めへん」とつっこんでいたのが、いい勘していてさすがでした。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)